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第五章

温泉街を襲う魔物

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 ホスプで温泉を堪能し、大きな宿で一日宿泊した翌日……。いよいよ次の目的地ヴェールへと向かうべく準備を整えていた。
 
「いやぁ~、体の疲れが吹っ飛んだみたいだよ。」

「ね~?長年の凝りが取れた気がするわ。」

 今日起きてきたみんなの顔は、普段と打って変わってとてもスッキリしたような……垢抜けたような感じだった。

「今日は森と一体化した街に行くんだったかしら?」

「あぁ。」

 そう問いかけてきたリリンも、枠に漏れず普段よりも垢抜けたような表情だ。そんな彼女に、昨日調べてわかった、あることを教えてみようと思う。

「これからいく街には、この国に一本しかない貴重な木があるんだが……その木に実る果実には食べた者の願いを叶える力があるとか言われてるらしいぞ。」

「な、なんですって!?」

「それ本当!?」

 かなり食い気味なのはリリンとフレイの二人。

「あくまでも噂だがな。」

「噂だって構わないわ。可能性があるならそれに賭けるのよ!!」

「そ、そうか……。」

「そうと決まれば早く行くわよ!!その願いを叶える果実……私が必ず手に入れてやるわ。」

 果実獲得に燃えるリリン。

 俺自身そんなに、その果実について詳しいわけじゃない。だが、昨日少し調べた時点で願いを叶える噂があること……そして、1ということが解っている。

 そんなに貴重な果実が、運良く手に入ればいいんだけどなぁ。

 リリンにそのことを告げるか告げまいか、迷っていると、突然街の中にけたたましい警報音が鳴り響く。

「なんだ?」

「この警報音は……魔物の襲来を報せるやつだよ。」

 ドーナがそう言った直後、街全体に声が響く。

『市民の皆様、が街へ向かって接近中です。急いで避難してください。繰り返します、マグマゴーレムが…………。』

 その放送がなった直後、先程まで観光気分だった人達が急いで避難を始めていく。

「ドーナ、マグマゴーレムってのは?」

「火山地帯に出現するゴーレムだよ。なかなか面倒な相手でねぇ……体表を覆ってるマグマの中にある核を壊さないと倒せないんだ。」

「そうなのか。」

 この街には気持ちの良い温泉がある。マグマゴーレムとやらのせいで、入れなくなったら嫌だな。

「それじゃちょっと倒してくるか。」

 これも人助け……いや、自分のためだ。

 そうしてマグマゴーレムを倒しに行こうとすると、俺の上を2つの影が通り過ぎていく。

「ヒイラギさん、ボク達が行ってくるよ~。」

「あなたに任せたら時間がかかりそうだわ、そこで待ってなさい!!」

「お供いたします。」

「あ……。」

 リリン、フレイそしてライラが、マグマゴーレムを倒しに向かってしまった。
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