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第五章
貸し切り露天風呂
しおりを挟む温泉に入れるという施設に足を運び、お風呂の貸し切りを頼むと、貸し切り専用のお風呂へと案内された。
「殿方様はこちらで、奥方様の湯はこちらになります。」
「それじゃ、いったんここでお別れかな。みんなゆっくり浸かって体を癒してくれ。シア達のことは頼んだぞ。」
「はいは~い、任せて。ヒイラギもゆっくりして来ていいからね?」
「あぁ、そうさせてもらうよ。」
そこでみんなと別れると、それぞれ暖簾をくぐって脱衣場へと足を運んだ。
「さてさて、どんなお風呂があるのか楽しみだな。」
服を脱いで浴場に続く扉を開けると、むわっと暖かい湯気が溢れ出してくる。その湯気には、火山性温泉特有の硫黄の香りも混ざっていた。
その湯気を抜けると、目の前に大きな露天風呂が姿を現した。
「おぉ!!露天風呂か。」
俺たちが貸し切った温泉は、この施設の上階の方にあるため、ここの露天風呂から見える景色はかなり良い。向こうには今にも噴火しそうなほど、活発な活火山も見える。
「温度はどうだ?」
試しに手を湯船に沈めてみるが、思ったよりも熱くはない。かなりちょうどいい温度に調整されている。シア達には少し熱いかもしれないと、心配だったが……この分なら心配はないな。
「まずは体を流そう。」
湯船から桶でお湯を汲んで、体を流す。いくら貸し切りとはいえ、作法は守らないとな。
そして体の汗を流した後で、ゆっくりと湯船に体を沈めていった。
「あ゛ぁ~……沁みるなぁ。」
やはり温泉は良い。日頃の疲れが流れ出ていくようだ。肩まで完全に温泉に浸かり、ゆったりと身を預けていると、目の前に見覚えのあるハチがぷかぷかと流れてきた。
「お前も入りに来たのか?」
そう問いかけると、メリッサの配下らしきハチは、いつものようにきびきびとした動きではなく、ゆったりと前足を額に当てて敬礼して見せた。
虫なのに水……というか温泉に入っても平気なんだな。まぁ、このハチにも今回はずいぶんお世話になった。俺達が寝ている間に周囲を警戒してくれた。それこそ、ずっと働いてくれていたのではないだろうか。
「いつもありがとな。」
ハチのことを撫でていると、頑丈そうな壁で仕切られた向こう側……女湯からみんなのはしゃぐ声が聞こえてくる。
「あっちもあっちでにぎやかだな。」
大きな露天風呂に使って疲れを癒しながら、向こう側から聞こえてくる和気藹々とした声に、ほほえましさを感じるのだった。
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