741 / 1,052
第五章
貸し切り露天風呂
しおりを挟む温泉に入れるという施設に足を運び、お風呂の貸し切りを頼むと、貸し切り専用のお風呂へと案内された。
「殿方様はこちらで、奥方様の湯はこちらになります。」
「それじゃ、いったんここでお別れかな。みんなゆっくり浸かって体を癒してくれ。シア達のことは頼んだぞ。」
「はいは~い、任せて。ヒイラギもゆっくりして来ていいからね?」
「あぁ、そうさせてもらうよ。」
そこでみんなと別れると、それぞれ暖簾をくぐって脱衣場へと足を運んだ。
「さてさて、どんなお風呂があるのか楽しみだな。」
服を脱いで浴場に続く扉を開けると、むわっと暖かい湯気が溢れ出してくる。その湯気には、火山性温泉特有の硫黄の香りも混ざっていた。
その湯気を抜けると、目の前に大きな露天風呂が姿を現した。
「おぉ!!露天風呂か。」
俺たちが貸し切った温泉は、この施設の上階の方にあるため、ここの露天風呂から見える景色はかなり良い。向こうには今にも噴火しそうなほど、活発な活火山も見える。
「温度はどうだ?」
試しに手を湯船に沈めてみるが、思ったよりも熱くはない。かなりちょうどいい温度に調整されている。シア達には少し熱いかもしれないと、心配だったが……この分なら心配はないな。
「まずは体を流そう。」
湯船から桶でお湯を汲んで、体を流す。いくら貸し切りとはいえ、作法は守らないとな。
そして体の汗を流した後で、ゆっくりと湯船に体を沈めていった。
「あ゛ぁ~……沁みるなぁ。」
やはり温泉は良い。日頃の疲れが流れ出ていくようだ。肩まで完全に温泉に浸かり、ゆったりと身を預けていると、目の前に見覚えのあるハチがぷかぷかと流れてきた。
「お前も入りに来たのか?」
そう問いかけると、メリッサの配下らしきハチは、いつものようにきびきびとした動きではなく、ゆったりと前足を額に当てて敬礼して見せた。
虫なのに水……というか温泉に入っても平気なんだな。まぁ、このハチにも今回はずいぶんお世話になった。俺達が寝ている間に周囲を警戒してくれた。それこそ、ずっと働いてくれていたのではないだろうか。
「いつもありがとな。」
ハチのことを撫でていると、頑丈そうな壁で仕切られた向こう側……女湯からみんなのはしゃぐ声が聞こえてくる。
「あっちもあっちでにぎやかだな。」
大きな露天風呂に使って疲れを癒しながら、向こう側から聞こえてくる和気藹々とした声に、ほほえましさを感じるのだった。
3
お気に入りに追加
636
あなたにおすすめの小説

望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。


前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる