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第五章
地獄蒸し
しおりを挟むお土産屋を回って、面白そうなものを購入した後、さっき野菜と卵を入れていた籠のある場所まで戻ってきた。
「そろそろ火が入ったかな。」
籠を開けてみると、野菜は色鮮やかに蒸しあがっていて、卵にもしっかりと火が入っているようだ。
「どんな感じに仕上がってるかな。」
試しに卵の殻を剥いて、軽く塩を振って食べてみた。すると、普通に茹でたものとは違う地獄蒸し特有の硫黄の風味。これはなかなか癖になる味だ。
味見をしていると、不意に視線を感じた。
「お兄さん、それ美味しい?」
「きになる。」
「じ、自分も食べたいっす。」
シア達が指をくわえてこちらを見ていたのだ。
「大丈夫、ちゃんとみんなの分もあるから。」
一つ一つ卵の殻を丁寧に剥いて、みんなに手渡していく。
「野菜食べたい人…いるか?」
「あ、ワタシ食べたいわ~。」
「ボクも欲しい!!」
「私にもいただけますか?」
野菜はランとフレイ、そしてイリスに渡った。
「えへへ~、いただきま~す!!」
「いただき…ます。」
早速シア達は蒸し卵を頬張った。するときらきらと目を輝かせる。
「これ美味しいっ!!」
「ぷりぷりで…ほくほく。」
「美味しいっす~!!」
卵一個はあっという間にみんなのお腹に納まってしまう。もっと多く蒸しておいても良かったかもしれないな。
卵を食べ終わった後、蒸した野菜にマヨネーズをつけて食べてみた。
「んっ、ニンジンがすごく甘く蒸しあがってる。ジャガイモもほくほくで美味しいな。」
「ホントに野菜が甘いわ!!果物みたい。」
「これずっと食べてられるよ~。」
「これが地獄蒸し……名前は地獄なのに味は極上ですねっ♪」
みんなで温泉街名物の地獄蒸しを味わった後で、今度はいよいよ温泉に入るべく移動を始めた。
「確かあの奥に見えてる大きな建物の中に温泉があるって、言ってたよな。」
お土産屋を巡っているときに、温泉に入れる場所は聞いておいた。すると、どこでも温泉に入れるというわけではないらしく、向こうに見える施設がここの温泉をすべて管理しているという話だった。
「なんか温泉の貸し切りもできるって話だから、せっかくだし貸し切りでゆっくり温泉に浸かりたいな。」
「貸し切りならば、ワシと主が二人で湯につかるのも可能じゃな。」
何を妄想しているのか、レイがにやけ面でそんなことを呟いていると、すかさずそれにランたちが反応した。
「そんなことが許されると思ってるの?」
「アタイの目が黒い間は抜け駆けなんて許さないよ。」
「ぬぎぎ……主の周りは防御が硬いのじゃ。」
ドーナとランの二人に取り押さえられ、抵抗も許されぬまま、レイは引きずられていったのだった。
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