上 下
738 / 1,052
第五章

慰安旅行計画

しおりを挟む

 獣人族の国でいろいろやるべきことを終えて、俺たちは再び人間の国へと戻ってきていた。平和な今のうちに、この国のいろんなところを巡ろうと思い立ったのだ。
 とはいえ、残念ながら人間の国に詳しいのは現状ドーナしかいないため、彼女にこの国の良い観光地を聞いている最中だった。

「この国の観光地……まぁすぐに思い浮かんでくる場所はあるよ。」

「本当か?」

「うん、この前寄ったマーレももちろん人気の観光地だったけど、この国にはあと二か所有名な観光地があるんだ。その一つが温泉街ホスプ。」

「温泉か……それは魅力的だなぁ。」

 今日までみんな頑張ったし、ここらで慰安旅行ってのも全然ありだ。ハウスキットにあるシャワーだけじゃ、どうしても満たされないものはあるからな。

「ちなみにもう一つは?」

「自然と一体化した街ヴェール。文字通り街と森が一体化してて不思議なところもそうだし、雰囲気が癒されるって、結構人気だよ。」

「森と一体化した街……か。そこに行けば、なにか面白い名物的なものとかあったりするかもな。」

「これは、人づてに聞いた話だけど……なんでもこの国に一本しかない木に実る果実があるとかなんとか。」

「それも魅力的だなぁ……。」

 どちらも魅力的となれば、今回の目的は疲れた体を癒すための旅行にしようか。そういう名目にすれば二か所両方行ったってなんの問題もない。今の気分的に、まずは温泉街ホスプに行って疲れを全部お湯に流して来たいな。

 その後は、森と一体化したヴェールって街に行って、大自然の中でリフレッシュする……。

「よし、じゃあ早速そのホスプに行ってみよう。」

 グレイスが飛んでくれれば、すぐにたどり着けるはずだ。そう決定したところでみんなに声をかけた。

「みんな、今から旅行に行こう。」

「旅行っ!!どこにいくの~?」

「りょこう…たのしみっ!」

「今回は、温泉街ホスプとヴェールって街に行ってみようと思う。」

「あらいいじゃない、ワタシも温泉入りたいわ。」

 温泉にはランも結構乗り気の様だ。

「今回の目的は、みんなの疲れた体を癒すことにしようと思ってな。」

「ふふん、さながら王都で活躍した私へのご褒美ってところね。」

 誇らしげにリリンが笑うと、そんな彼女にレイが自分のことを指さしながら言った。

「それならワシも活躍したぞ?」

「あんたは操られてたじゃない!!」

「う~む?そんな記憶はないのじゃ~。」

 リリンのそんな指摘に対して、すっとぼけているレイだった。

 斯くして、今まで頑張ってきたことを労うための慰安旅行が決定した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

処理中です...