713 / 1,052
第四章
シンとの関係
しおりを挟む「もうわかっていただけたと思いますけど、俺が戦争を止めたい理由の一つがこれなんです。」
そう話し始めると、それを遮るようにして、バイルが率直な疑問をぶつけてきた。
「いやいや……ちょっと待て、その前になんで獣人族の国王様と一緒にいるんだ?」
「それが一番の謎なんです。もちろんそれについても話してもらえますよね?」
「あぁ、ぜひとも教えてもらいたい。」
ずいずいと、バイル達三人が詰めよってくる。なかなか自分で話すのも恥ずかしい話なんだが、言葉が伝わらないシンでは伝えられないし……仕方ないな。
一つ溜息を吐いた後、バイル達になぜ獣人族であるシンがここにいて、俺と関わっているのかを話した。
話をすべて聞き終えると、バイル達は心の底から呆れたようにため息を吐き出した。
「お前ってやつは……。」
「得体が知れない……とは思っていましたが、まさか人知れず獣人族の国を救っていたとは……。」
話を鵜呑みにしている彼らに、ある疑問をぶつけてみることにした。
「今の話が嘘だとは思わないんですか?」
「そりゃあ、何の証拠も無しにそんな話をされたら信じねぇだろうが……。」
「こうして現に獣人族の方が目の前にいますしねぇ。」
「……まぁ、つまりここまで証拠を見せられて、信じないほど私たちは愚かじゃないということだ。」
シンという存在は、俺の話の証拠として、とても有効だったようだ。彼ら言う通り、もしここにシンという存在がいなかったら、誰もこの話を信じてはくれなかっただろう。
もちろん、先に話をつけていたエートリヒもな。
「では、シンと俺の関係もわかったところで、これからの話をしましょうか。」
「あぁ、まずは王都にどうやって入るかだな。」
「恐らくは、キースの配下たちが私達を待ち受けているでしょうから、正面から入るのはまず無理と考えたほうがいいでしょう。」
「そうだな。それに王都に着く前に足止めをされる可能性だってある。」
「それについては俺に考えがあります。」
邪魔をされずに、王都に入る方法はもう考えてある。その方法を使えば、もしかすると明日には王都に着けるかもしれない。
3
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる