上 下
707 / 1,052
第四章

国王の魔の手

しおりを挟む

 気絶させた騎士を横に寝かせていると、安全を確認したバイル達がこちらに歩いてきた。

「追手か?」

「恐らくは……何とか殺さずに捕らえられたので、ちょっと尋問してみましょう。」

「ったく、飯どころの話じゃなくなったな。」

 バイルの言う通り、今は飯どうこうの話じゃなくなった。まず先に、こいつから話を聞きださない事には、安心してここで寝食をすることさえできない。

 一先ずこの人のことを鑑定してみるか。まぁ、どんな結果が出るかはわかり切っているけど。

「鑑定。」

 倒れている騎士に向かって鑑定を使った。そして一つ一つ項目を確認していくと、やはりあの欄に洗脳と書いてあった。

「やっぱりこの人も洗脳されてたみたいですね。」

「……そうか、にしてもこの魔物は一体?」

「この人が、その魔物に騎乗して攻撃してきましたよ?」

「なにっ!?それはおかしいぞ、騎士団にテイマーの心得がある奴なんていないはずだ。」

 恐らくバイルの言っていることは正しい。鑑定で分かったことなのだが、この人のスキルの欄には、魔物を従わせることができるようなスキルなどは一切なかった。

「一回顔を見てみるか、騎士団に所属してるやつの顔と名前は全部覚えてる。」

 そう言うとバイルはおもむろに騎士の兜を取り外し、中の人物を確認した。そして驚愕する。

「な、お前っ……キースじゃねぇか!?」

「まさかっ!?王国騎士団長のキースか!!」

「あぁ、間違いない。だが……こいつはまだ洗脳されてなかったはずだ。目の前で、あの紙に署名したからな。」

 ということは……この数日間の間に洗脳されたということになるな。騎士団長が洗脳されているということは、他の騎士や兵士達も洗脳されている可能性が高い。非常にまずいことになったな。

 最悪の状況を頭で思い描いていると、辺りから複数の気配を感じた。

「……どうやら囲まれてしまったようですね。」

 暗い闇の中から、いくつもの赤い目がこちらをじっと見つめていた。そして当然、その魔物の上には鎧を着けた騎士達が騎乗していた。

「チィッ、いよいよオレ達を消そうって腹か!?」

「どうやらそのようですね。」

 悪態を吐くバイル達を守るため、ルーカスたちが即座に陣形を整えた。だが、恐らくルーカス達では荷が重い。この数を同時に相手するのは苦だが……やるしかないな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

処理中です...