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第四章
フレイの耳かき
しおりを挟む耳掻き棒をアルコールで消毒し、フレイはふぅ……と大きく息を吐き出した。
「そ、それじゃあ、いくよ。」
ゆっくりと自分の耳に、硬い木の棒が入ってくるのを感じた。そしてその棒の先端が耳の粘膜にピタリと触れる。
「ど、どうかな?このぐらいの深さで大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ。」
ちょうどいい深さのところに耳掻き棒が当たっている。深さを確認してフレイは耳掻き棒を動かし始めた。
「んしょ……よいしょ。」
「すまない、最近耳掃除をしてなかったから、汚れが溜まってるかもしれない。」
こっちに来てから自分で耳掻きをしてなかった。シア達にはやったんだが、自分のことはすっかり忘れていた。
「ううん、大丈夫。むしろすごい綺麗だよ?耳掃除をしてないのが嘘みたい。」
「そうか、なら安心した。」
カリカリとフレイが耳の中を優しく掻き回す。一掻きごとに体から力が抜け、どんどん柔らかいソファーへと沈んでいってしまう。
「重ねて謝るようで悪いんだが、もし寝てしまったらごめんな?」
フレイにそう言うと、ピタリとフレイの動きが止まった。
「そ、それって……ボクの耳掻きが気持ちいいってこと?」
「あぁ、とても気持ちが良い。練習の成果がバッチリ出てるよ。」
「ホント!?じゃ、じゃあもっと頑張る。」
そして再びフレイは、カリカリと耳の中を撫で始めた。先程までとは違い、緊張がほぐれたのか少しぎこちなかった動きが無くなり、耳のツボを的確にマッサージするように耳掻きをしてくる。
ま、不味いな……寝そうだ。
気持ちいい耳掻きのせいで、猛烈な睡魔が襲ってきていた。どんどん瞼が重くなり、開けているのが辛くなってくる。このまま目を閉じたら、もう開けられなくなるだろう。
「えへへ、ヒイラギさん凄い眠そうな顔してる。別に寝ちゃってもいいんだよ?」
フレイのその言葉がトドメとなり、俺は睡魔の誘惑に負けて、重い瞼を閉じてしまう。すると、意識が急速に深い微睡みのなかへ落ちていくのを感じた。
その最中フレイの声が聞こえる。
「おやすみなさい……ヒイラギさん。いつもお疲れ様。」
その言葉が聞こえた後、意識は完全に微睡みの中に呑まれて消えてしまった。
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