上 下
696 / 1,052
第四章

お寿司

しおりを挟む

 出来上がった寿司をもって、みんなのもとへと向かった。さてさて、どんな反応を見せてくれるだろうか?

「みんなお待たせ、今日の夕ご飯できたぞ。」

 そう声をかけると、真っ先にシアがこちらに走ってきた。

「今日はお刺身っ?」

 シアはそう満面の笑みで聞いてくる。最近魚と言えば刺身というのが続いていたからな。今日も刺身と思われてしまっているのだろう。

「ん~、惜しいけど外れだな。今日はちょっと違う料理を作ったんだ。」

「ふえっ?お刺身じゃないの?」

「お刺身じゃないっす!?」

 シアだけでなく、グレイスまで刺身じゃなかったことを驚いていた。

「お刺身じゃないなら、今日は何を作ったのかしらね?」

「ヒイラギのことだからねぇ~、また予想を上回るような料理が出てくるのかもよ?」

「ふふっ♪それはそれでとても楽しみですねっ。」

「ぱぱの…おりょうり…たのしみっ!」

 期待を込めながらドーナ達がこちらへ歩いてくる。

「お姉様は何が出てくると思う?」

「え~?どうかしら、ヒイラギの料理っていろんなのがあるからちょっと判断が難しいわね。シン、あなたはどう思うの?」

「むっ!?我か……我は先ほどの塊の身を豪快に焼いたと予想するぞ。いや、むしろ我はそれがいい!!」

 完全にシンの予想を裏切るような形になってしまったが、きっとこれも喜んでくれるはずだ。

 そして皆が席についたところで、皆の前に蓋がされた重箱を置いた。

「すごい‥‥綺麗な箱ね。」

「これは重箱っていってな、この中に今日の料理が入ってるぞ。」

「楽しみ~!!」

「わくわく…ぱぱっ…はやくあけて?」

 待ちきれない様子のシアとメリッサ。身を乗り出して今か今かとこの蓋が開けられるのを待っている。これ以上焦らすのはかわいそうだから開封するか。

 重箱の蓋に手をかけてゆっくりと開けた。そして中に入っている料理に皆の視線が一気に降り注ぐ。

「こ、これってもしかして……お寿司ってやつじゃないんですか!?」

 鼻息を荒くしながらイリスが聞いてくる。

「正解、これは寿司っていう料理だ。お刺身をご飯と一緒に握っただけのシンプルな料理だが、その分素材となる魚の美味しさを、より感じることのできる料理なんだ。」

 今回使ったネタはとても良いものだったからな、きっととても美味しいはずだ。

「さて、それじゃあご飯が乾く前に食べるぞ。」

 そして俺が手を合わせようとすると……すでに皆手を合わせていて残っていたのは俺だけだった。

「俺待ちだったか……それじゃ、いただきます。」

「「「「「いただきますっ!!」」」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

処理中です...