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第四章

みんなの好き嫌い

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 出来上がったペペロンチーノを持って皆のもとへと向かうと、いつものご飯を食べるテーブルにぐったりとイリスが突っ伏していた。どうやらこってりと絞られたらしい。

「はい、みんなお待たせ。」

 皆の前に出来立てのマトマとベーコンのペペロンチーノを並べていく。

「おっ!!今日はパスタかい。」

 パスタを見た瞬間にドーナの表情が綻んだ。パスタは、ドーナの大好物だからな。

「ドーナはパスタ大好きよね~。ま、ワタシももちろん好きだけど。」

「シアもお兄さんのパスタ大好きっ!!」

「ぱぱの…おりょうり…ぜんぶすきっ!」

「ありがとな。」

 そう言ってくれたシアとメリッサの二人の頭をポンポンと撫でる。

 子供の意見というのはとても正直だ、美味しくないなら美味しくないと正直に言うし、美味しかったら美味しかったですごい喜んでくれる。
 だから子供にも認められるような料理を作れれば、案外万人受けする味つけができるようになるのだ。

「うん?よくよく見てみると、これマトマの実が入ってるねぇ。」

 シア達の頭を撫でていると、パスタを観察していたドーナが言った。

「もしかして苦手だったか?」

 日本でもトマトは意外と好き嫌いが別れる食材だ。

 例えば、生のトマトは食べられなくても、ケチャップやトマトソース等は食べられるという人もいる。もちろん、トマトを使った物が全て食べれないという人もいるがな。

「アタイ全然大丈夫だよ。むしろ大好きさ。」

「そうか、安心したよ。他のみんなは大丈夫か?」

 皆にそう問いかけると、別にマトマが嫌いという人はいないということが判明した。

 あとでみんなの嫌いなものとか、そういうのをしっかりと調べておかないとな……。

「よし、それじゃ温かいうちに食べよう。いただきます……。」

「「「いただきま~す!!」」」

 いつもの挨拶と共に、みんな一斉にパスタをフォークに巻きつけて食べ始めた。

「食べながらでいいんだが、この機会にみんなの嫌いな食べ物を把握しておきたい。コレが絶対食べられない……とか、そういうのあったりするか?」

 そう問いかけてみると……。

「アタイは特にないねぇ。」

「ワタシもないわ~。あ、でも血生臭いのは嫌ね。」

 なるほど、ドーナとランはほとんどのものは食べられそうだな。ただ、ランは血生臭いのが苦手……と。

「シアは苦いの嫌いっ!!」

「わたしは…まだ…わからない。」

 シアは前に一口飲んだコーヒーのことを思い出したんだろうな。苦さで顔をしかめるシアは、なかなか新鮮だったのを覚えている。
 メリッサに関しては、まだまだ食べたことがない食材がほとんどだ。わからなくても仕方がない。これから探っていけば良い。

「私もありませんよ?」

 にっこりと笑いながらイリスは言う。逆にイリスが嫌いなものがあったら、この世にそれは存在しているのだろうか……。

 と、少し疑問に思っていると、とんでもない答えがグレイスから返ってきた。

「自分が嫌いっす~。」

「グレイス、それは食べるのが嫌か?それともそれ自体が嫌いなのか?」

「食べるのが嫌いっす!!」

 おおぅ……グレイス、お前はここに来るまでにいったい何を食べてたんだ? 

 まさか、食べるものが見つからないときに、虫を食べてたのか?……まぁ何にせよ、今のところ食料に困っているわけでもないし、俺も昆虫食にはあまり興味はない。食卓に虫が調理されて並ぶことはないだろう。

 グレイスの嫌いなものに驚いていると、リリンが口を開く。

「私はが苦手よ。あれだけはどうしても好きになれないわ。」

「うえっ!?お姉様ピルマン苦手なの?なんか子供っぽいね。あっ!!ちなみにボクは嫌いなものないよ?」

「ピルマン……これか?」

 市場で購入した、ピーマンのような野菜をバッグから取り出してリリンに見せた。

「それよそれっ!!てかなんで買ってあるのよ!!」

「え?そりゃあ……料理に使うからだよ。」

「私のには絶対入れないでよね!!」

 今、やっと心の中にあった引っ掛かりがとれた。

 以前ピザを作った際に、リリンが一切ミックスピザに手を付けていなかったのは、コレが理由だったらしい。あれにも確かにピーマンは入れていたからな。

「……わかった。」

「あえっ?ず、ずいぶんもの分かりがいいじゃない。」

 即答すると、リリンは少し驚いていた。

 嫌いなものを無理に食べさせようとは思ってない。それが原因で、一生食べられなくなることだってある。
 だから無理に食べさせるのではなく、自分から食べてみたい……と思わせてやれば良いのだ。そして実際に自分から食べてみて、美味しい……と認識を改めさせることができれば、苦手克服が完了する。

「苦手なものを無理に食べさせようとはしないさ。で、シンはどうだ?」

「我は嫌いなものはない。」

「わかった。ライラは……?」

「それだ。」

 ライラが指さしたのは、俺が手に持っていたピルマン……。どうやら彼女もリリンと同じく、こいつが嫌いらしい。

 だが、ミックスピザをライラは食べていた……よな?食べられるが、あまり食べたくはないということなのだろうか?

 いずれにせよ、この二人にはピーマンもとい、ピルマンを使った料理はしばらく控えたほうがよさそうだ。



 
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