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第四章
嫉妬
しおりを挟むそしてイリスと手を繋いで、ハウスキットへと戻ると……。
「「「あっ!!」」」
ドーナとラン、そしてフレイの三人がこちらを指差して、体をふるふると震わせていた。
「ふふっ♪ふふふっ♪これはもしかして……嫉妬されているのでしょうか?」
にっこりと笑い、イリスは体をくねくねとくねらせながら言った。
「ちょっと話を聞かせてもらおうかしら?ねぇ?」
顔に影を作り、不吉な笑みを浮かべながらランがイリスの肩をつかむ。
「ね~?ボクにも聞かせてほしいな~?」
「さすがにちょ~っとねぇ、見過ごせないよ。」
ランに続き、ドーナとフレイもイリスを拘束する。
「あら?あらあら?こ、これは私どうなっちゃうんでしょうか?」
ひきつった笑みになり、顔中から冷や汗をだらだらと流しながらイリスが助け舟を求めてこちらを見てくる。
「ま、頑張れ。」
「そ、そんなぁ~!!」
そしてイリスはずるずると、三人に店の奥の方へと引きずられていった。これから凄まじい問答がはじまるのだろうな。
引きずられていったイリスの姿を、苦笑いを浮かべながら見送っていると、服の裾がくいっと引っ張られた。
「お兄さん、お兄さん!!」
「ん?シアどうした?」
「お兄さんから、シアの大好物の匂いがするの!!」
服に顔を埋めて、匂いをスンスンと嗅ぎながらシアは言った。
「シアは鼻がいいな。今日はまた魚を買ってきたんだ。」
「じゃあ今日の夕ごはんはお魚!?」
「その通りだ。とっても美味しい魚らしいから、たくさん食べてくれ。」
目をキラキラと輝かせているシアの頭をポンポンと撫でる。
「えへへぇ~♪楽しみっ!!」
尻尾をブンブンと振り顔を綻ばせるシア。この姿を見ているだけで癒される。シアのことを撫でていると、今度はシアがいる方とは反対方向の服の裾が強く引っ張られた。
「ぱぱ…しあちゃんだけ…ずるい。わたしも…なでて!」
む~……っと頬を膨らませて、メリッサが頭を差し出してくる。どうやらシアが撫でられていることに嫉妬したようだ。
「わかったわかった。」
空いていた左手でメリッサの頭も一緒に撫でる。
「ふふ…やっぱり…これすき。」
そしてひとしきり二人の頭を撫でて言った。
「そろそろ昼御飯を作りたいから、今はこれでお終いな。」
「えへへぇ、気持ちよかったぁ。」
「まんぞくっ。」
二人は満足すると仲良く手を繋いで、ソファーの方へと向かった。さてさて、じゃあ昼御飯を作るとするか。
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