674 / 1,052
第四章
実食!!バルンフイッシュ
しおりを挟むいつもの挨拶を終えて、みんな一斉に食べ始まるのかと思っていたのだが……皆盛り付けを崩したくないのか、なかなかお造りに手を出せずにいるようだ。
これは俺がきっかけを作ってあげないといけなさそうだな。俺はバルンフィッシュの薄造りに箸を伸ばして、豪快に何枚か一気に掴み取り、肝醤油につけて口に運んだ。
「「「あっ……。」」」
俺が豪快に食べたのを見て、皆がそう声を漏らした。
「みんなお造り食べないのか?食べないなら、俺が全部食べちゃうぞ?」
「し、シアも食べるっ!!」
「わたしもっ!」
一つきっかけを作ってあげると、みんなもいそいそと刺し身に手を伸ばし始めた。やっぱりちょっと遠慮してたっぽいな。
別に今更だと思うんだが……こういう風に盛り付けるのは控えた方がいいかな?案外手がつけにくいのかもしれない。
「さてさて、次は白子の天ぷらをいただこうかな。」
バルンフィッシュの刺し身は、やはり河豚のような食感で淡泊な味だった。だが、それに伴って肝醤油の濃厚な味が一際よく感じられた。
河豚の肝もこんな感じの味わいなのだろうか?食べたことがある人に教えを請いたい。まぁ、その人が生きてるわけないんだが……。
そして今度は白子の天ぷらに箸を伸ばし、天つゆにつけて口に運んだ。
「ん~、クリーミーで濃厚だ。うまい。」
白子も河豚の白子と同様に、とてもクリーミーで濃厚な味わいだった。めちゃくちゃ酒がのみたくなる料理だ。
「これ、美味しいよね~。サクサクなのにトロトロですごい不思議。」
俺が白子の天ぷらを味わっていると、同じく白子を食べていたフレイが言った。
「ヒイラギよ、我は芋酒が飲みたくなってきたぞ。」
そしてフレイに続くようにしてシンが言う。まぁ酒が飲みたくなる気持ちは大いに分かる。
「芋酒か……ここに置いてあるやつでもいいか?」
「芋酒があるのか!?」
「あるにはあるぞ。ちょっと待っててくれ。」
一度席を立ち、グラスに氷を入れてそこに芋焼酎を注いだ。そしてそれをシンのもとへと運ぶ。
「ほい、これ飲んでみてくれ。」
「む……匂いは完全に芋酒だな。ではいただこう。」
豪快にシンはグラスに注がれた芋焼酎を一気に飲み干した。
「っかぁ~……うまい。うまいぞ!!ヒイラギ!!」
「そうか、口にあったようでよかったよ。んじゃまこいつを好きに飲んでくれ。」
シンの前に先ほどの芋焼酎が入った一升瓶を置いた。彼はそれを嬉々としてグラスに注ぎ、次々に飲み干していった。
そんなシンの姿をみていたら、俺も酒が飲みたくなったので、日本酒をいただこうかな。
そして美味しい料理と酒を交え、本日の夕食も幸せに終えるのだった。
3
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる