上 下
673 / 973
第四章

白子の天ぷら

しおりを挟む

「まずは白子を適度な大きさに切り分けて、軽く打ち粉をしようか。」

 白子を適度な大きさに切り分け、キッチンペーパーでよく水気をきってから打ち粉をまぶす。白子自体がかなりの水分を含んでいるため、打ち粉をしないと天ぷらの衣が剥がれてしまうのだ。

「油は180℃の温度にして、高温で一気に揚げるぞ。」

 打ち粉をした白子に天ぷらの衣をたっぷりと絡ませて、高温の油で揚げていく。揚げ上がりの目安は箸で持ち上げたとき、天ぷらからふつふつと振動が伝わってきたら揚げ上がりだ。

「白子だけじゃ色味が無いな、少し他の野菜も揚げておくか。」

 白子だけじゃ盛り付けたときに色味が一色になってしまい、華やかさが無い。だから三日月草等の色のある野菜もいくつか揚げておくことにする。

「後はしっかりと油をきって……。」

 天ぷらは揚げ上がるときに、しっかりと油をきっておかないと衣がすぐにサクサクじゃなくなってしまう。他に天ぷらが上手く揚げ上がらない原因としては、衣にしっかりと火が入っていない場合。
 よく天ぷらの専門店の人が衣は生物なまものと言う。これは、しっかりと天ぷらの衣にも火を通さなければならないということなのだ。

「グレイスの分は天丼にしておこうか。」

 炊き上がったほかほかのご飯の上に、きざみ海苔を振りかけて、軽く天つゆをご飯の上にかける。
 そしてその上に白子の天ぷらと野菜の天ぷらを盛り付け、さらに天つゆを上から回しかければグレイス専用の天丼完成だ。

「そういえば、初めてシュベールに行った時の道中でも天丼を作ったな。」

 あの時は確かソードフィッシュと、いろんな野菜を天ぷらにして天丼にしたんだよな。ミルタさんが美味しさで、目を大きく見開いていたのをよく覚えている。

「シン達がどんな表情をして食べるのか楽しみだな。」

 多分、白子のクリーミーな味わいは初めてだろうから驚くかもしれないな。皆がどんな反応をしながら食べるのか楽しみにしながら、できた料理を皆のもとへと運びに行った。

「みんなお待たせ。」

 そして皆の前にバルンフィッシュのお造りを置くと……。

「「「おぉ~……。」」」

 と、皆出来栄えに感嘆したような声をあげた。

「これ、盛り付けるのに時間かかったんじゃないの?」

「そんなことないぞ?刺し身を切ったら盛り付けてれば、切り終わるときには盛り付け終わるからな。こっちが天ぷらで、これがグレイス用の天丼な。」

「久しぶりの天丼っす!!美味しそうっす~。」

「さてさて、それじゃみんな食べようか。」

 手を合わせると皆も一斉に手を合わせた。

「「「いただきま~すっ!!」」」

 すっかり恒例となった挨拶をみんなで終えて、一斉に食べ始める……はずだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

料理を作って異世界改革

高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」 目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。 「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」 記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。 いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか? まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。 そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。 善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。 神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。 しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。 現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...