661 / 1,052
第四章
二つ目の鍵付きダンジョン
しおりを挟むそしてあの浜辺に着くと、俺の目の前に予想だにしない光景が広がっていた。
「潮は引いてない、それに水位も下がってない。だが、あれはなんだ?」
海面に目に見えての異常は見当たらない。だが、いつもの海にはない物がそこにあった。
「なんでこんなとこに扉が……しかも不自然に鍵穴が空いてるな。」
海面に不自然にできた扉。この前までこんなものはなかった。十中八九先ほどの地震の原因だろう。
「この扉はどこかで……。」
海面に浮かぶ扉はどこかで見たことのあるような扉だった。
「思い出した、バフォメットのダンジョンの扉に似てる。ただ、あの扉は鍵穴なんてついてなかった。ん?待てよ……この鍵穴まさか。」
まさか、あれが使えるんじゃないかと思いバッグに手を伸ばすが……。
「しまった、ハウスキットに置いてきてしまったな。」
焦って出てきたから、ハウスキットにバッグを置きっぱなしにしてきてしまったようだ。
「一度戻るしかないか。」
津波が来るような予兆はない。皆に安全を伝えるために一度戻るべきだ。
俺は走ってハウスキットへと戻った。そしてみんなに安全なことを伝える。
「みんな、取りあえず災害の心配は無さそうだ。安心していいぞ。」
「まったくもう、急に飛び出してったから心配したのよ~?」
大きくため息を吐きながらランが言った。
「すまなかった。でも津波の予兆がわかるのは俺しかいないだろうから、それに危険を犯すのは一人でいい。」
と、俺が言うとランに額にデコピンを喰らう。
「いっ…つ。」
「そういうのがダメなのよ~?自分だけ危険ならいい~とかそういうのは無し。まぁ今回は見逃してあげるわ。」
どうやらこれで勘弁してくれるらしい。額はヒリヒリと痛いが……安い代償だろう。
「それだけじゃありませんよね?ヒイラギさん?」
「お見通しか。」
にっこりと微笑みながら、イリスはそう問いかけて来た。どうやらこの地震でできたアレが、シルケーの予言のものだと気が付いているようだ。
「実は前に釣りした海岸に、大きなダンジョンの扉のようなものがあったんだ。」
「だ、ダンジョンの扉だって!?」
ドーナが思わず立ち上がる。
「あぁ、鍵穴があるダンジョンみたいだった。」
「鍵穴付きのダンジョン……。本当にそうだとしたら、この国で二つ目の鍵付きダンジョンになるねぇ。」
深く考え込むようにドーナは言った。
もしあれが本当に鍵付きのダンジョンなら……今は国の監視もついてないし、ダンジョンキーは俺の手にある。
このチャンスを逃す手はない。
2
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる