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第四章

龍を魅了するヒイラギの料理

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「みんな、できたぞ~。」

 昼御飯ができるまでの間、トランプで遊んで時間を潰していたみんなに声をかける。

「むぅっ!!ちょっと待つのだ!!今、我は危機的状況に瀕しておる。」

 自身の手に残るジョーカーを見つめ、冷や汗を流すシン。そしてシンと共に最終局面まで残っていたのは……。

「ほら早くカードを出せ、お嬢様方のご飯が冷めてしまう。」

 まさかのライラだった。表情ひとつ変えずにシンからカードを引き抜こうとしている。

 ライラがババ抜きをやるなんて……ちょっと意外かもな。だが、ここまでポーカーフェイスが上手いライラがここまで残ってしまうか。いやはや、ババ抜きというのは何が起こるかわからないものだな。

「ぬぐぐ……さ、さぁ引くのだっ!!」

 覚悟を決めたのかシンは、ライラにカードを差し出した。そして無表情を貫きながらライラは、シンからカードを一枚抜き取る。

「ぬあぁぁぁ!!負けたっ!!」

「ふっ、国王敗れたり。」

 頭を押さえて悔しがるシンを、ライラが初めてポーカーフェイスを崩し嘲笑う。

「勝負は着いたみたいだな。早く食べるぞ。」

 すると、そそくさとみんないつもの席に座り、手を合わせた。

「いただきます。」

「「「いただきますっ!!」」」

 いつも通りの挨拶を終えて皆一斉に食べ始めた。

「これは肉かっ!!」

「最高に美味しいっす~♪」

 肉とわかるやいなや、グレイスとシンは食べるペースが上がる。

「卵トロトロ~、美味しいっ!!」

「おにくも…たまごも…ぜんぶおいしい。」

「おかわりもちゃんとあるから、たくさん食べていいぞ。」

 みんなモリモリとカツ丼を食べ進める最中、ほぼ同時にとある三人が空になった丼を差し出してきた。

「ワシはおかわりを所望するのじゃ!!」

「ワタシも欲しいわ。」

「アタイももらえるかい?」

 真っ先におかわりを要求してきたのは、ドーナとラン、そしてクリドラの3人だった。

「むっふっふ、お主の作る飯は極上じゃ!!こんな物を味わっては、離れられなくなってしまうのぉ~。ワシを依存させた責任は……もちろんとってくれるんじゃろ?」

「まぁ、離れられなくなる気持ちはわかるわね。これを食べちゃったら……もう魔物を生で食べようなんて思わなくなっちゃうから。」

「うむ、まったくその通りじゃな。」

 うんうんと頷くランとクリドラ……。こうやって少しずつ共感できることが増えれば、今のドーナとランの関係みたいになれる……かな?
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