上 下
654 / 977
第四章

予言

しおりを挟む

「それで~?今日は何の用?」

 イリスから取り返した毛布を被り、頭だけ出したシルケーが問いかける。まるでカタツムリだ。

「今日はヒイラギさんの紹介に来ただけです。それと、シルケーちゃんの顔も見たかったですし?」

 頭だけ出しているシルケーの頬をぷにぷにとつつきながらイリスは言った。

「なぁ~!!ツンツンするなぁ~。」

「ふふっ♪相変わらずさわり心地のいい頬っぺですねっ♪」

 シルケーはイリスのツンツンから逃れるため、頭すらも毛布の中にすっぽりと収めてしまった。

「どうですかヒイラギさん?この子が海の女神シルケーちゃんです。」

「うん、うん……大丈夫なのか?」

「ふふっ♪心配になる気持ちもわかりますけど、こう見えてこの子はちゃんとやることはやる子なので、大丈夫ですっ。」

 まぁ人の世界に現界してないってだけで、奇跡は起こしてるって話だったしな。仕事はしてるっちゃしてるのか。

「そういえば、最近海の様子は変わりありませんか?」

「うみ~?ん~、特に気になることはな~いかな~。」

「そうですか、なら安心ですね。」

「他に用はない~?なら早く帰ってよ~、まだまだ寝足りないんだから~。」

 シルケーは枕に頭を乗せて、いつでも寝れるような体勢になり、もううとうととし始めている。

「ふふっ♪ほどほどにしてくださいね?」

 ポンポンとシルケーの頭を撫でた後、イリスは俺の方を向いた。

「それでは帰りましょうか?これ以上シルケーちゃんの睡眠の邪魔をすると、怒られそうですしね。」

「そうだな。」

 そして帰ろうとした時……。

「あ、今海の音が変わった~。多分、近々海に何か起こるから注意しといた方がいいよ~。」

「何かが起こる?」

「うん。今波の音が変わったから間違いないよ~。それじゃ伝えたからね~。」

 それだけ言うと、シルケーはスヤスヤと寝息をたて始めた。

 近々何かが起こる……か。注意しておいた方が良さそうだな。

 シルケーの言葉を胸にしまって、俺はゆっくりとまぶたを閉じた。そして再び目を開けると……

「戻ってきたか。」

「はいっ。」

 辺りを見るとシアとメリッサ、そしてフレイが俺の真似をして、膝をついて祈りを捧げていた。やはり現実世界の時間は、まったくと言っていいほど進んでいないらしい。

「さて、皆そろそろ帰るか。」

「ふえっ!?もういいのっ?」

「まだ…おいのりした…ばっかり。」

「こ、こんなに短くていいのかなぁ。」

 不安になっている三人にイリスが言った。

「ふふっ、大丈夫ですよ。ちゃ~んと皆さんの祈りは届いてますから。」

 女神シルケーに祈りを捧げた後、教会を後にするのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...