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第四章
マーレの教会
しおりを挟むイリスに連れられ、大通りから離れた細い路地を進むと、目の前に教会が見えてきた。
「あ、見えてきましたよ。」
イリスが教会を指差す。
「きょ、教会ってボクが入っても大丈夫かなぁ。」
目の前に見える教会を眺めて、フレイが不安になっていた。
「大丈夫ですよ~。入るだけなら誰でもできます。人でも魔物でも関係ないんです。」
不安がるフレイに、にっこりと微笑みながらイリスは言った。神を信仰する気持ちに、分け隔てはないということだろうか。
「わたしも…はいれる?」
メリッサがイリスに首をかしげながら問いかける。あまり気にしたことはないが、メリッサもれっきとした魔物なんだよな。
「もちろんですよ~。」
わしわしとイリスがメリッサの頭を撫でる。
「ん…あんしん。」
「ね~?ホント安心だよ。」
そして教会の敷地の中に入る。綺麗な花が咲いた花壇に、小さな噴水……獣人の国と違ってちゃんと整備されてる。
あっちの教会も今頃、シンの命令で整備し始めただろうか?もう信仰がなくなって、死にかけることがないようにしてほしいものだ。そんな事を思いながら教会の中へと入ると、普通の教会と違うところに気がついた。
「ん?女神像が無い?」
この教会には、祀られている女神を模して作られた女神像が無いのだ。
「あ、気が付きました?彼女、今の今まで人の前に姿を現したことがないんです。だから誰も彼女を真似て像を作ることができないんですよ。」
「なるほど……そういうことなら確かに無理だな。」
女神のなかでも恥ずかしがり屋なのか?それともただの面倒くさがりか……。まぁ、いずれにせよ会ってみればわかるか。
「で、これはどこに祈ればいいんだ?」
「あの十字架の前で祈れば大丈夫ですよ。後は私に任せてください。」
イリスに言われた通り、十字架の前で膝をついて目を閉じ祈りをささげると、不意に辺りから波の音が聞こえ始める。ふと目を開けると、俺とイリスは波打ち際に立っていた。
「ここが神域か。」
「はい、あの子はどこに……ってあそこに寝転がってますね。」
イリスが指差した先には浜辺に似合わない、一台のベッドが置かれていた。そしてそのベッド上で、一人の少女が眠っていた。
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