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第四章
苛烈する正妻争い
しおりを挟む「な、なな……なんであなたがここにっ!?」
ランは俺の足を掴んでいるドラゴンを目にすると、思わずそう声を上げた。
「いやぁ~、先日この辺でワシのツガイになる予定じゃった、カオスドラゴンの気配を感じてな。捕まえにきたのじゃが……カオスドラゴンがこの人間になっておったのじゃ。」
苦笑いする足元のドラゴンと、ランを交互に見た後、俺はランに問いかけた。
「ラン……こいつのこと知ってるのか?」
「ワタシ達、ドラゴンの頂点……クリスタルドラゴン…様よ。」
ランが様付けする……ってことは、本当に最高位のドラゴンだったんだな。自称ではなかったらしい。
「ほれ!言ったであろう!?これで信じてくれたかの~?」
「わかった、わかった……。」
自分の身分を証明してくれる人がいて、少し心に余裕ができたのか、クリスタルドラゴンはスリスリと足に顔を擦り付けてくる。
「時にサファイアドラゴンよ、さっきこのオスは自分のツガイじゃと言っておったな?」
「えぇ、このオスはワタシのっツガイです。」
自分の物だということを主張するようにランは言ったが、そんなことは意に介さず、クリスタルドラゴンはあることをお願いしてきた。
「のぉ……ワシもそのツガイの輪に入れてくれんか?後生なのじゃぁ~。」
必死にそう懇願するクリスタルドラゴンに、ランはキッパリと言い放った。
「ダメです!!」
「な、なんでじゃ!?」
「いくらクリスタルドラゴン様でも、ヒイラギは譲れないわ!!」
すると、ランは俺にぎゅっと抱きついてくる。
「良いではないか!!ワシら龍種は一夫多妻が一般的じゃろ!?」
「そんなの関係ないわ!!」
バチバチとクリスタルドラゴンと、ランが火花を散らしていると、ハウスキットから話を聞きつけたドーナが現れた。
「話は聞いたよ。」
「むっ!?お主は……レッドドラゴンか?メスじゃったのか。」
「違うよ、アタイもヒイラギと同じ人間さ。」
「むむむ……同種族の匂いがするというのに、人間……今日は驚くことがいっぱいじゃ。」
ぼやくようにクリスタルドラゴンは言うと、再びドーナへと視線を向けた。そして俺とドーナを交互に見ると……。
「お主もこやつのツガイか?」
「ま、まぁ……そんなとこだよ。」
「やはり何匹もメスがおるではないかっ!!」
そして今度はランの方へと視線を向ける。
「今はワタシ達で、正妻の座を争ってるのよ。」
「ならばワシもその争いに参加するぞ!!ワシにだってその争いに参加する権利はあるはずじゃあ~ッ!!」
最高位の威厳はどこへやら……と呆れながら、必死に駄々をこねるクリスタルドラゴンの姿を眺めるのだった。
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