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第四章
話の通じないドラゴン
しおりを挟むひとしきり俺の匂いを嗅ぎ終えたドラゴンは、恍惚とした表情を浮かべる。
「うむ……うむ!!懐かしきこの匂い……数百年ぶりだのぉ~♪相変わらずいい匂いをしておる。やはりワシの鼻は間違っておらんかった。さぁこれでもう隠しだてはできぬぞ?大人しくツガイになるのじゃ!!」
ドラゴンはハァハァと息を荒げながら興奮したように言う。ダメだこのドラゴン……話が通じない。
仕方ない……少し強引だがこの拘束から抜けさせてもらおう。
「フンッ!!」
「むおっ!?なんと…ワシの力で押さえ込めぬかッ!!」
龍桜を発動させ、無理やりドラゴンの手の中から脱出する。そして、面と向かってそのドラゴンに言い放った。
「残念だがカオスドラゴンはもうこの世にいない、俺が倒したからな。」
「む?異なことを言う、ワシの目の前におるではないか。」
きょとんとした表情を浮かべてドラゴンは言う。
「なら俺に鑑定を使ってみろ。お前ほどのドラゴンなら持ってるだろ?」
「むぅ……仕方がないのぉ。」
そしてドラゴンは鑑定を使ったのか、目を大きく見開いた。
「な……人間じゃと!?じゃが、それなら何故ワシら龍のスキルを持っておる!!」
「その答えは、俺がカオスドラゴンを倒して、その能力を丸々貰ったからだ。」
すると、そのドラゴンの眼光がより一層鋭くなり、ギロリと俺のことを睨み付けた。
「今の話を鵜呑みにするとして、今のお主はカオスドラゴンよりも強いということで間違いないのじゃな?」
「そういうことになるな。」
どんどんドラゴンの放つ殺気が増していき、辺りをピリピリとした空気が包み始める。
「くっくく、ではそれを確かめさせてもらうとしようかの?」
くつくつと笑いながら、ドラゴンは大きく口を開けた。ブレスの構えだ。
「それはもう嫌という程見た。」
ブレスのチャージが完了する前に、一気に距離を詰めた。だが、その途中で嫌な気配が背筋を抜ける。本能に従って、急ブレーキをかける。
「ッ!!」
次の瞬間、その判断が正解だったことを思い知る。俺の目先の地面に、どこからかレーザーのような光線が放たれたのだ。
「ほぅ……いい勘を持っておる。」
「ブレスの構えはブラフだったってわけか。」
「くく、カオスドラゴンを倒したほどの者ならば、ワシらのブレスの恐ろしさは、よ~く知っておろう?」
こいつはまた一筋縄ではいかなさそうだ。相当に戦い慣れてる。
心の中で悪態を吐き、俺は一段と目の前のドラゴンへの警戒を強めるのだった。
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