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第四章
シンのジレンマ
しおりを挟むクルリと後ろを振り返ると……。
「ふふっ♪」
イリスが微笑みながら自分のことを指差していた。私の分は?と言いたいのだろう。
「イリスの分はランが持ってるはずだぞ?」
「ホントですか!?ランさ~んお土産く~ださいっ♪」
ランがお土産持っていることを知ったイリスは、ソファーに腰かけていたランのもとへと向かった。
「イリスのお土産は……これよ。」
「これは、クッキーですね?」
イリスへのお土産は、きれいに焼かれたクッキーだった。果物をジャムにしたものがのせてあったり、様々な種類のクッキーが包みに入っている。
「イリスよく紅茶飲むでしょ?だからこういうお菓子にしたんだけど……。」
「嬉しいです。ありがとうございますっ♪」
ランの言うとおり、紅茶をよく飲むイリスにはピッタリのお土産だな。
さて、皆にお土産も行き渡ったし少し休憩しようかな。いつものソファーに腰かけてコーヒーを飲む。
「ふぅ……。」
コーヒーを飲んで一息ついていると、シンが正面のソファーに座った。
「して、例の国の重役達はどうだったのだ?」
「あぁ、やっぱり洗脳されてたよ。」
「やはりか……だがその重役らの洗脳も解除したのだろう?」
「もちろん。ちゃんと協力も得られた。」
多分王都に戻ったらすぐに動いてくれることだろう。
「だが、大丈夫なのか?重役ということは、国王に会う機会も多いはずだ。洗脳を解かれていることがバレてしまわんか?」
「それなら心配ない。彼らは王都でやることをやったらこの街に戻ってくる手筈だ。」
それに王都でやることと言っても、そんなに時間はかからないはず。1日2日位で終わらせて、この街に戻ってきてくれるはずだ。
王都に長く留まれば留まるほど、国王に動きが感づかれてしまうリスクが高くなるからな。彼らもそれはわかっている。
「そうか、なら安心か。」
「あぁ、きっと大丈夫だ。」
「……またしても信じることしかできぬのだな。」
「歯がゆいけどな、仕方ないさ。」
彼らを信じないことには始まらない。今、俺達にできるのはそれだけだ。
「我にも何かできることがあればよいのだがな……。生憎、今は力になれそうなことがないのだ。」
ぼやくようにシンは言った。本当はこんなことになっていなければ、シンが活躍することができる場面がたくさんあったはずなんだが……。
さすがに今の状況でシンのことを、他の誰かに見られるわけにはいかない。
歯がゆい思いをさせてしまっているのはわかっているが、もう少し辛抱してほしい。
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