転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
623 / 1,052
第四章

フレイご乱心

しおりを挟む

 バイル達との会談を終えた後、祭りの賑わいがまだ残る夜の街を一人歩いていた。

「ドーナ達、もう帰っちゃったかな?」

 少し遅くなってしまったからな。祭りで、はしゃぎ疲れたシア達を連れて、帰っているかもしれない。

「なんか昼より人がたくさんいる気がするな。」

 通りには昼間よりも多くの人がいるように見える。それと夜になってお酒を飲む人も増えたせいか、一層賑やかだ。人混みを掻い潜りながら、ドーナ達を探して歩いていると……。

「お兄さん捕まえた!!」

「ぱぱ…みつけた。」

 いつの間にか俺の腰に、シアとメリッサの二人が抱きついていた。そして二人を追って、ドーナ達が人混みを掻き分けて近づいてきた。

「急に走り出したと思ったら、そういうことだったのね~。」

「お疲れ様だったね、ヒイラギ。」

「あぁ、待たせてすまなかったな。」

 一言ドーナ達に謝罪していると、フレイがフラフラとした足取りでこちらに近づいてくる。心なしか顔が少し紅潮しているように見えるな。

「ひいりゃぎさぁぁん!!」

「うおっ!?ど、どうしたんだ?」

 近づいてきたと思ったら、呂律が回ってない声で俺の名前を呼びながら、シア達と同様にフレイも抱きついてくる。

「じ、実はねぇ……。」

 ドーナがフレイに何があったのか教えてくれた。聞くところによると、どうやらジュースと間違ってお酒を買い、口にしてしまったらしい。

「それで酔っ払った……と」

「ぼくはきゅうけちゅきらから、よってにゃい!!」

 フレイは酔ってないと言い張っているが、この様子を見るに完全に酔っぱらっている。

「ぼくらってぇ~、ひいりゃぎさんと、も~っといっしょにいたいんらよぉ~。うぅ~……。」

 先程まで笑っていたのに、今度は涙目になって服にグリグリと頭を押し付けてきた。酔っぱらって感情の制御ができてないみたいだ。

「ご、ごめんな。」

 一先ず宥めようと、しばらくフレイの頭をポンポンと撫でていると、服越しにフレイの安らかな寝息を感じた。

「酔い潰れて寝ちゃったか?」

 起こすのも可哀想だし……仕方ない背負って帰るか。ドーナとランにシア達のことをお願いして、俺はフレイのことをおんぶした。
 華奢な体をしているから、全く重さは感じない。ただ、吐息が耳にかかって少しくすぐったい。

「さて、じゃあそろそろ帰るか。」

 そして潮祭を満喫した俺達は帰路についたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

処理中です...