621 / 1,052
第四章
王の器とは…
しおりを挟むそれから少しすると、ダグラスとカムジンの二人が目覚めた。彼らは洗脳されていた間の記憶が全く無いようだ。ルーカス達と全く同じだ。
一方、バイルは洗脳されていた間の記憶が少し残っているらしい。恐らくステータスに記載されていた通り、70%しか洗脳されていなかったからだろう。
「さてオーナルフ卿、ダグラスとカムジンも目覚めた……早速話を聞かせてもらおう。」
「わかりました。」
エートリヒは、彼らに洗脳魔法のことを話した。
「なるほどな、理解した。」
「バイル殿は今の話を信じるのですか?」
眼鏡をかけたダグラスという男が、バイルに問いかける。
「信じるも何も、オレには陛下に洗脳された瞬間の記憶がある。信じる他あるまい。」
記憶があるバイルはあっさりと信じてくれたが、ダグラスとカムジンの二人は、まだ少し信じれないようだ。
「陛下が良からぬことを考えているのはわかった。その上でオーナルフ卿、貴様は何を企んでいる?」
バイルはエートリヒを威圧するような目で睨む。エートリヒは少し間をおいてから話し始めた。
「少し勘違いをしておられるようですね。企んでいるのは私ではありません。そこにいるあなた方の洗脳を解いた彼ですよ。」
エートリヒの一言で皆の視線が一気に俺に集中する。
「貴様…名は?」
「ヒイラギです。そしてオーナルフ卿の言うとおり立案者は俺です。質問は俺にどうぞ。」
「では、ヒイラギ……単刀直入に聞く。いったい、オレ達に何をさせるつもりだ?」
「……あなた方には、国王を失脚させる手伝いをしていただきたい。」
「なっ、謀反を起こすつもりか!?」
ダグラスが声を荒げ言った。
「落ち着けダグラス、まだ話は終わってはいない。陛下を失脚させたい理由はなんだ?」
「今回の戦争を止めるには、それしか方法がない。わかりますよね?」
「なるほどな。では最後の質問だ、なぜそんなに戦争を止めることにこだわる?」
「その答えは、協力を確約してくれたら教えましょう。」
バイルの目を見てハッキリと言った。すると彼は口角を上げてニヤリと笑い、こちらを見た。
「ふっ、そうか。ではオレはお前達に協力しよう。」
「なっ…なっ、しょ、正気か!?バイル殿!!」
「あぁ、オレはコイツらに協力する。生憎オレにも戦争を止めなきゃいけない理由があるからな。」
バイルのまさかの決断に、ダグラスはあわてふためく。そして今の今まで沈黙を貫いていたカムジンが口を開いた。
「では、私も協力をさせていただこう。」
「か、カムジン殿まで……いったいなぜ!!」
「今の陛下は国王の器にあらず、洗脳という卑劣な手段を使い無理矢理意見を通すなど、王がすることではない。」
そして三人のうち二人が協力を決断した。このダグラスという男は、どのような決断を下すのだろうか?
3
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる