上 下
613 / 1,052
第四章

潮祭

しおりを挟む

 そして何事もない平和な数日間経て、とうとう潮祭当日を迎える。ルーカス達とは、夜にエートリヒの屋敷で落ち合うことになった。
 幸いなことに、彼らは再び洗脳されることなく自身が仕える重役達を、この街に連れてきてくれたのだ。これで作戦の成功に大きく一歩踏み出すことができる。本当によくやってくれた。

 今日は、夜までは何もすることがなく暇なので、今はドーナ達とみんなで潮祭を楽しみに来ていた。

「ふわあぁ……お店がいっぱい!!」

「ひとも…たくさん」

 街の大通りにはたくさんの出店が並び、人が溢れかえっている。お祭り特有のとても賑やかな雰囲気だ。

「二人とも迷子になっちゃうから、手を離さないようにな?」

 俺は迷子を防止するために、シアとメリッサの二人と手を繋いでいる。これだけたくさんの人がひしめいているからな、この中で迷子になられたら探し出すのは至難の技だ。

「うん、わかったぁ!!」

「ふふ…ぱぱのて…あったかい。」

 そしてはぐれないように気を付けながら、大通りを進んでいると……。

「お兄さん!!あれやりたいっ!!」

 シアが指差している出店を見てみると、何やら棚にたくさんのぬいぐるみが置いてあり、その一つ一つに番号が書いてあった。

「くじ引き屋みたいなものか?」

 近くに行ってみると……。

「いらっしゃい!!一回銀貨5枚でこの中のどれかが当たるくじが引けるよ~!!」

 一回銀貨5枚か日本円にして500円ほど……ちょっとお高めだな。

「お兄さん!!シアあれほしいの!!」

 シアが羨望の眼差しで見つめるのは、棚の一番上に置いてある、大きなブラックフィッシュのぬいぐるみだ。

「当たるといいな、取りあえず10回分頼む。」

「毎度ありっ!!じゃあこの箱の中から10枚紙を引いていいよ。」

 そう言って店主はちょうど手が入る位の大きさの穴が開けられた、四角い箱をシアに差し出した。

「じゃあ…これと、これと~。」

 シアは吟味しながら一枚ずつくじを引いていった。そして10枚引き終わり、確認してみると……。

「あちゃ~お嬢ちゃん残念だったね~。全部ハズレだ。」

「ふにゃ……あたんなかった。」

 狙いのぬいぐるみどころか、何一つ当たらなかったシアはしゅんと落ち込んでしまう。

「大丈夫だ。まだチャンスは残ってるぞ?」

 再び店主に銀貨を50枚渡し、10回分のくじを購入する。

「お兄さんありがとう!!今度こそ当てるの!!」

 そしてシアは再びくじを10枚引いた。その結果は……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

処理中です...