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第四章
誤魔化せないシンの嗅覚
しおりを挟むそしてハウスキットに着き、俺はガチャリ……と扉を開けた。
「あっ!!お兄さん達帰って来た!!」
「ぱぱ…まま…おかえりっ!」
扉を開けるとシアとメリッサの二人が、駆け足でこちらに駆け寄ってきた。
「ただいま。」
「はぁ~、みんなただいま~。」
後ろからハウスキットに入ってきたランは、くたびれた様子でソファーに腰かけた。その様子が気にかかったのか、彼女のもとにメリッサが近寄って問いかけた。
「まま…つかれた?」
「あら?心配してくれてるの?大丈夫よ。」
ぽふぽふとランはメリッサの頭を撫でながら言った。
「それじゃあ今日何をしたのか、アタイに詳しく教えてもらおうかねぇ~?」
スッとランの向かいにあるソファーにドーナが腰かける。そしてランに一つ紅茶を差し出しながら言った。
「もちろんいいわよ?」
差し出された紅茶を受け取り、一口飲んでからランはドーナに今日の出来事を話し始めた。あれは暫く終わりそうにないな。
俺も一服しようと前に進むと、顔になにやらもふもふしたものが当たった。
「ん?シンか……どうしたんだ?」
そのもふもふの正体はシンの鬣だった。行く手を遮るようにシンが立っていたのだ。
「スンスン…スンスン……。」
そしてしきりに俺の服の匂いを嗅ぎ始めた。
「な、なんだ?どうしたんだ?」
突然のことに少し焦りながらシンに問いかける。すると、逆にシンから質問を投げかけられてしまった。
「ヒイラギよ、今日の昼飯は肉か?」
「い、いや?違うが……。」
ま、まさかシンのヤツ。あの時焼いたシーデビルの肉の匂いを感じ取ったのか!?潮の香りで消されてると思ったんだがな……。
「む、では何故ヒイラギから、こんなに旨そうな肉の匂いがするのだ?」
腕を組み、首をかしげながらシンは俺に問いかけた。試しに自分の服の匂いを嗅いでみるが、それらしき匂いはしない。
「そんなに匂いするか?」
「うむ、まぁ我は鼻がいいからな。普通わからない微かな匂いでも感じることができてしまうのだ。」
シンの嗅覚は犬のように発達しているようだな。手を腰に当て、盛大にドヤ顔をかましている。
「して、その肉の匂いはどうしたのだ?」
「今日の晩御飯までの秘密だ。」
ドヤ顔をかましているシンに少し意地悪をしたくなったので、肉のことについては晩御飯のときまで秘密にすることにした。
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