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第四章

圧倒的捕食者

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 無人島の浜辺でブラックフィッシュの背中から降りた。

「ありがとな、帰りもお願いできるか?」

「キュイ!!」

「助かるよ。じゃあちょっと行ってくるからな。」

 ポンポンと彼の頭を撫でて、俺はランとともに無人島を観察する。

「さてさて、着いたのは良いが……それらしい気配はないな。」

 辺りの気配を探るが、それといって大きな気配はない。本当にいるのか思わず疑いたくなってしまう。

「ホントにいるのかしらね?」

「また気配を消せるスキルを持ってるやつかもしれないな。」

 ミクモみたいに、完全に気配を消せるスキルを持ってたりしたら厄介だ。気を付けないとな。

「めんどくさそ~。」

 露骨にランが嫌な顔になる。まぁ、めんどくさそうな相手ということには、激しく同意できる。

「さて、浜辺でうろついてても仕方ないし……森の中を探索してみるか。」

 森と言うよりは密林に近いかな?なんか南国に生えてそうな植物がいっぱい生えてるし……。

「そうね、行ってみましょ。」

 そして密林の中へと足を踏み入れる。密林の中は湿度が高くジメッとしているため、少し居心地が悪い。

「……おかしいわね。」

 密林の中を歩いていると不意にランが呟いた。

「どうかしたのか?」

「おかしいとは思わない?これだけ生き物にとって住みやすそうなところなのに、一匹も生き物がいないのよ。」

「そういえばそうだな。」

 この島についてから鳥の鳴き声も聞こえない。歩いている途中でも虫一匹として見ていないのだ。

「なんか、サラマンダーの時のデジャヴを感じるな。」

 サラマンダーがいた火山も、あいつ以外の生き物がいなかった。違和感を覚えながら歩いていると、島の反対側の砂浜へと出てきてしまった。

「反対側に出てきちゃったな。」

「結局そのシーデビルってやつは出てこなかったわね。」

「仕方ない。来た道を戻るか。」

 踵を返して戻ろうとしたその時……グチャリと何かがつぶれるような音がした。

「ラン今の聞こえたか?」

「えぇ、聞こえたわ。あっちの方からよ。」

 急いでその音の発生源へと向かう。すると浜辺にあるものが打ち上げられていた。

「これは……鯨か!?」

 音の発生源には、体長数十メートルはあろうかという鯨が浜に打ち上げられていた。その鯨の傍らに、もう一匹……ある生き物がいた。

 そいつは鯨の腹にかぶり付き、肉を引きちぎり咀嚼している。

「どうやらアイツがシーデビルってやつらしいな。ラン、ここで待っててくれ。ちょっと行ってくる。」

「気をつけてね、ヒイラギ。」

 岩陰でランを待機させ、俺は鯨の内臓を麺でも啜るかのように食べているヤツに近づいた。
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