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第四章
マーレギルド長 ギル
しおりを挟む相手の素性がわかったので、俺とランはギルに案内され二階のギルド長室へと来ていた。
「あぁ、まぁ座ってくれや。ちょいと散らかってるが……。」
「ちょっとではない気がするんだが?」
部屋の中は酒の瓶や紙くずが散乱していた。とてもちょっとという言葉では片付けられないほど、散らかっている。
「ガハハ!!まぁまぁ、気にしなさんな!!」
ギルは笑いながら二対に並べられたソファーにどかりと座る。俺とランはもう片方のソファーに腰かけた。
「ふぃ~、そいで兄ちゃん達魔物探してんだって?」
「できるだけ強いやつを探している。」
「そうか、ほんならちょうどいいのがいるが…聞いとくか?」
「あぁ、教えてくれ。」
「この街からちょっと行ったとこに丘があるんだが……。」
ん?あの丘に住んでる魔物……ちょっと待てよ?嫌な予感が頭をよぎるが、一先ず話を聞いていると。
「数年前からあそこに、まぁデカいアシッドスライムが住み着いちまっててなぁ。」
それあいつだよな?凍らせて粉々にした、あのスライムのことだよな?
「あのバカども全員ぶちのめしたあんたなら倒せると思うが、どうだ?」
「……そいつはもう倒した。」
「はぁ!?マジかよ……。」
衝撃の事実にあっけにとられるギル。まぁ、普通の反応だよな。紹介しようとした魔物が、既に討伐済みだったらそうなる。
「あいつ以外でなんかいないのか?」
「いるにはいる。だが、そいつはマジでヤバいぞ?冒険者の階級言えば、白金級の実力がないと無理だ。」
最上級の冒険者じゃないと討伐できない魔物か。ちょうど良い、そのぐらいじゃないと意味がない。
「問題ない。そいつの特徴と、どこにいるか教えてくれ。」
「そいつの名前はシーデビル……海の悪魔って呼ばれてるやつだ。生息地は、ここから沖に出て少し行ったところにポツンと一つ小さな無人島がある。そこだ。」
「そうか、わかった。」
俺とランが立ち上がり部屋を出ようとすると、ギルに引き止められた。
「お、おい!!マジで行く気か?」
「あぁ。」
「兄ちゃんが強ぇのはわかるがな、シーデビルは強さの次元が違ぇんだ!!ここのギルド長として、無駄に犠牲は出せねぇんだよ。」
「そうか。」
俺はクルリとギルに向き直ると、彼が瞬きをした瞬間一気に踏み込んで、背後に回り込みポンポンと肩を叩いた。
「そういうことなら、これでいいな?」
驚きのあまり、固まってしまったギルを置いて、俺とランはギルドを後にした。さてさて、シーデビルか……どんな魔物か楽しみだな。
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