585 / 1,052
第四章
激闘の末
しおりを挟む龍桜を使った直後、地面を蹴り、一気に距離を詰める。その最中フードの女はボソッと何かを呟いた。
「おぉ……そうきたか。」
魔力が弾けるバチバチという音にかき消され、何を言っていたのかは聞こえなかったが、今はそんなことを気にしてる場合ではない。
「ふッ!!」
一瞬で距離を詰め、フードの女に向かって拳を突きだした。その次の瞬間‥……。
「なッ!?」
俺の視界が突然反転する。大幅に上がった動体視力でも、何をされたのかわからない。相手が動く挙動さえも捉えることができなかった。
そして地面と激突する刹那体をひねり、受け身をとる。
「今の状況で受け身をとるか、反応は悪くない。」
舞い上がった砂ぼこりの中から、フードの女はしっかりと俺を見据えて言った。
「だが、それを使ってそんなものか?」
「っ!!どういう意味だ……。お前は、何を知ってる!?」
フードの女は、まるで俺の使っている技を知っているかのように言った。
「さぁな、知りたいことがあるなら私を倒して、無理矢理にでも吐かせればいいのではないか?」
「……望むところだ!!」
再び地面を蹴り、フードの女に向かい急接近する。そしてさっきと同じように拳を突きだした。
「同じ手は効かん。」
拳が届く刹那、俺は全神経を目に集中させる。すると、とてつもない速さでフードの女の手が、俺の拳に触れようとしているのが見えた。
「その言葉そっくりそのまま返すぞ。」
「ぐっ!!」
咄嗟にサンダーブレスを拳に纏わせると、俺の手に触れたフードの女の体に電流が流れ、苦悶の声を上げた。
フードの女は俺から距離をとるが、それも予想通りだ。とられた距離を一瞬で詰め、さっきのお返しとばかりに連撃を繰り出す。
俺の体に触れられないとわかったフードの女は、ひたすらに当たらないように避けていた。
「いやはや……雷の体に龍の体とは厄介だな。」
ポツリとそう呟くと、フードの女はポケットからハンカチを取り出して、俺の視界を塞ぐように投げつけてきた。
「ふん!!」
それを切り裂くと、フードの女は俺の視界を切った一瞬の間に、また距離を取っていた。
「こちらの戦いでは流石に劣るかな。どうも場数が違うようだ。」
ため息交じりにそう言いながら、フードの女は困ったように頭を掻いた。
「私も適応しなければならないようだ……って、ん?」
突然、フードの女へと向かって様々な属性の魔法が撃ち込まれた。そして向こうからドーナ達が走ってくるのが見える。
「ふむ、どうやら時間のようだな。もう少し……再会の感動を味わっていたかったが仕方ない。」
魔法によって巻き上がる砂埃の中で、フードの女は少し残念そうにそう呟く。
「またな。ヒイラギ。」
最後にそう言い残すと、フードの女は忽然と姿を消した。
14
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!
クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』
自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。
最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。


黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる