上 下
584 / 1,008
第四章

フードの女

しおりを挟む

 背後に鋭い殺気を感じ、飛び退く。飛び退いた先には海があったため、着地した瞬間に水飛沫が上がった。

 そして構えをとってフードの女に向かい合った瞬間、戦慄が走った。

「なっ……!!」

 フードの女の構えが俺と全く同じだったのだ。しかも違和感の一つすらない、綺麗で洗練された熟練の構えだ。

「お前は何者だ!!」

 そう問いかけるが、答えとして返ってきたのは鋭く重い拳だった。

「くっ。」

 なんとか無力化はできた……しかし水が足に纏わりつき、思うように動かない。とっさに距離をとったのはいいが、これでは逆に不利になってしまっている。

 相手も詰めてきているから状況は同じはず……なのだが、さっきの動きは水の影響など全く感じさせない動きだった。

「ふっ、未熟だな。」

 フードの女はポツリとそう呟くと再び加速し、連撃を浴びせてくる。足が水の抵抗を受けているため、一つ一つの攻撃を捌く際にワンテンポ遅れてしまう。

 そして、当然それはギリギリの駆け引きをしている際には大きな足枷となる。

「ぐあっ!!」

 連撃の一つが重く横腹に突き刺さる。途端に、口の中に鉄の味が広がった。
 良い一撃をもらったが、当然のごとくフードの女は連撃を止めない。寧ろ激しさを増した。

「ぐっ……。」

 一つ攻撃が入ると、一つ……また一つと攻撃が当たり始める。連撃なのに一つ一つが重い。これをこのまま受け続けるのは不味い。

「はぁッ!!」

 連撃の最中、足元の水に拳を叩き付け、大きく水飛沫を上げた。

「ほぅ……。」

 そして水飛沫で相手の目が眩んでいる隙に、なんとか砂浜に移動することができた。

「はぁ…はぁ。」

 未だに海水に足をつけているフードの女は、こちらを見て唯一確認することができる口元を、ニヤリと歪ませながら、ゆっくりと砂浜に歩いてきた。

「足をとられる海水より、しっかりと足が使える砂浜に移動するか……いい判断だ。」

 フードの女は、あれだけの連撃をしていたにも関わらず息一つ乱していない。

「だが、水の抵抗がなくなったのは私も同じ。状況は変わらない。」

「どうかな?」

 ダメージは超再生で回復した。もう体に問題はない。

 このフードの女には生半可な戦い方では勝てない……と、判断し俺は龍桜を使った。

「龍桜……。」

 不覚はとったが……ここから全力でやらせてもらおう。第2ラウンドだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...