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第四章

海辺に独り

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 皆でプリンを味わった後、昼寝してしまったみんなをハウスキットに置いて、俺は一人……今朝釣りをしていた浜辺を訪れていた。

 別に何か目的があったわけじゃない。ただ、少し一人になりたかっただけだ。

「こっちの世界に来て大分経つな。」

 砂浜から夕焼け色になりつつある海を眺めて、こっちに来てからの日々を回想する。思い返してみればなかなか刺激的な日々だった。転生するときにカオスドラゴンに襲われたり、シアやドーナ、そしてランとグレイスと出会って一緒に旅をして……。

 あっちの世界じゃ、まずこんな日常を過ごすことなんて無かっただろう。

「そういえば、あっちの世界で俺ってどうなったんだろう?」

 死亡事故として処理されたか……はたまた殺人事件として処理されて、料理長が逮捕されたか。

「ま、悲しんでくれる人もいなかったし、別にどんな風に処理されててもいいか。」

 唯一あっちで俺のことを心配したり、気にかけたりしてくれていた師匠も亡くなってしまっている。

 もし、師匠が生きていたら悲しんでくれただろうか……。

「考えてもわかんないな。」

 人の思いなんてものは、他人にはわかり得ないものだ。もし、人の心が読めたなら……。いや、心が読めたらそれはそれで嫌なこともあるかもな。

 他人の知りたくない自分の印象を知ってしまうかもしれない。もしくは、他人の本当の姿を知ってしまうかもしれない。

 潮の満ち引きを眺めながら、そんなことを考えていると、海岸の奥の方から一人……誰かが歩いてくるのが見えた。

「ん?」

 深いフードがついた黒いローブを身に纏い、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。フードを深く被っているから顔を見ることはできないが、体型的に恐らくは女性だろう。

 変な人だと思ったが、別に殺気があるわけでもなかったので、単なる散歩だろうと再び海の方へと視線を戻す。そしてある違和感に気が付いた。

 …………気配が無い?

 普通どんな人でも気配というものは存在する。だから歩いて近づいてくればわかるんだが、さっきのローブの人は気配というものを全く感じない。

 おかしい……そう思って再び視線を向けてみるが。

「ッ!!」

 フードの人は既にそこにはいなかった。ほんの一瞬目を離しただけなのにも関わらずだ。

「どこに……。」

 その答えはすぐにわかった。背後から、鋭いナイフのような殺気を感じたから……。
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