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第四章

マーレで外食

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 ドーナと二人で通りを歩いて飲食店を探していると、前方から嗅いだことのある匂いが漂ってきた。

「ん?この匂い……どこかで嗅いだことがあるような気がするな。」

「そんなにこの匂いが気になるのかい?あんまりいい匂いじゃないけどねぇ。」

 確かにドーナの言うとおり、あまりいい匂いではない。でも、何かで嗅いだことがある匂いなんだよな。

 腕を組み、首を捻って記憶をたどる……そして思い出した。

「あぁ、この匂いナンプラーだ。こっちの世界にもあるんだな。」

 いや、むしろ海街だからそういったものがあるのが普通なのかもしれない。魚介類を発酵させれば作れる調味料だからな。

 ただ、いざ自分で作ろうとすると、とんでもない悪臭を放つものが出来上がるんだよな。一回試しに自作してみて後悔した記憶がある。

「ナンプラー?なんだいそれ?」

「魚を発酵させて作る調味料だよ。」

「魚を発酵……って腐らせるのかい!?」

「そうだぞ。この独特の匂いと発酵させてできたコクが、ある種類の料理には欠かせないんだ。」

 特にエスニック料理には、ナンプラーは欠かせない調味料だな。

「い、いろんな料理があるんだねぇ。」

「ま、俺はあんまり好みではないがな。」

 あの独特の匂いがいいという人もいるが、俺はそれだったら普通の醤油がいい。そもそもエスニック料理なんてあんまり食べないから、慣れてないだけなのかもしれないが……兎に角、俺の好みではない。

 通りの飲食店を何件か見て回っている最中、ドーナがある店の前で一瞬立ち止まったのが目についた。

「そこの店、気になるのか?」

「えっ、あ…いや。」

「ふむ、メニューは……今朝揚がった魚の塩焼きに、おっ?刺し身もあるのか。いろいろあるみたいだし、ここにしようか。」

「う、うん……。」

 そしてドーナが足を止めたお店の中へと入った。

「いらっしゃいませ~!!何名様ですか?」

「二人なんだが、個室ってあるか?」

「ございますよ~。」

「じゃあそこで頼む。」

「かしこまりました~!!二名様ご来店です~!!」

 元気のいいウエイトレスに出迎えられ、俺達は奥の個室へと案内された。

「それではお飲み物の方を先に伺いますね~。」

「俺は紅茶と……アプルの絞り汁を。」

「アタイも紅茶で。」

「紅茶をお二つとアプルの絞り汁ですね~。かしこまりました!!」

 ドリンクの注文を聞くと、ウエイトレスは個室から出ていった。今のうちに食べるものを決めておくか。

「ドーナは何を食べるか決めたか?」

「うーん、そうだねぇ……。」

 するとドーナは、メニュー表をまじまじと眺め始めた。

「我も見たいぞ!!」

 俺達だけがメニュー表を眺めているのを羨ましがったのか、シンがバッグからひょこッと顔を出した。

「シン……正論を述べるようで悪いんだが、多分シンがこのメニュー表を見ても、何にもわかんないと思うぞ?」

「忘れていたのだぁ~……。」

 そう嘆きながらシンは再びバッグの中へ頭を沈めていく。

「まぁ、俺が美味しそうなやつ選んでやるから、ゆっくり待ってろって。」

「うむ、頼むぞ。」

 俺もメニュー表に目を通す。店の表に出ていた通り、いろいろな海鮮を使ったメニューがあるみたいだな。焼き魚や貝の酒蒸しなどなど、海街ならではの料理がたくさんある、

「アタイはもう決まったよ。」

「早いな、何にしたんだ?」

「この貝焼きにするよ。実は、前に来たときもこの店でこれを食べたんだ。」

「美味しかったのか?」

「そりゃあもう美味しかったんだよ。」

 ドーナがそこまで言うのなら、相当美味しいんだろう。

「じゃあ俺もそれにするよ。シンもそれでいいだろ?」

「うむ、構わん。」

「じゃあ決定だな。」

 そしてメニューが決まり、少しすると先程のウエイトレスの人が飲み物を運んできた。

「お料理のご注文はお決まりですか?」

「あぁ、この貝焼きを三つ頼む。」

「貝焼きを三つですね~、かしこまりました~。」

 メニューを確認すると、ウエイトレスは再び部屋から出ていった。

「ほい、シンの飲み物だ。」

「感謝するぞ!!」

 シンにアプルの絞り汁を手渡すと、バッグの中で勢いよく飲み始めた。

 料理が来るまで、俺もゆっくり紅茶でも飲みながら待ってるとするか。
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