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第四章

会話

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「キュイ!!」

 俺が近づいていくと、群れの先頭にいたブラックフィッシュが鳴いた。そして頭を足にくっつけてくる。

「お前すごいな、こんなに仲間がいるのか。」

 頭をなでなでしていると、こちらにメリッサが近づいてきた。それを見た彼は……。

「キュイ~」

 と、一つメリッサに向かって鳴いた。

「ん…こんにちは。」

 まるでメリッサは言葉が分かるかのように、その鳴き声に答えたのだ。

「め、メリッサ、まさかこの子の言葉が分かるのか?」

「うん…わかる。ぱぱ…わからない?」

「あぁ、残念ながらわかんないな。」

 メリッサは蜂の言葉が分かるからな、彼の言葉も感じとることができるんだろう。

 正直羨ましいなぁ……。

「ぱぱ…て…かして?」

「ん?手か?いいぞ。」

 言われた通り手を差し出すと、メリッサは俺の手を握り、もう片方の手を彼の頭にポン……と置いた。

 すると、驚くべきことが起こる。

「あ、あの…き、聞こえます?」

「おぉ!!聞こえるぞ。」

 メリッサの手を介して彼の声が聞こえてくる。

「ふふ…ぱぱ…うれしそう。」

 嬉しいに決まってる。動物との会話なんて何度夢見たことか。それが現実になっているのに、嬉しくないはずがない。

「こうやって泳いでいる姿を見るかぎり、体はもう大丈夫なんだな?」

「おかげさまで、このとおり狩りもできるぐらいまで回復しました。本当にありがとうございます。」

 うんうん、一安心だな。

「そ、それでなんですけど……人間さんの優しさを見込んでお願いがあるんです。」

「何か困ってることでもあるのか?」

「実は、最近自分達を捕らえようとする人間がいて困ってるんです。昨日自分も人間から逃げてたら、浅瀬の岩場に迷いこんじゃってて……それであそこに打ち上げられてたんです。」

 なるほど、そう言うことだったのか。

「なるほどな。」

 一先ず彼らの状況は理解した。何とかしてやりたいが……。

「ぱぱ…わたし…このこたち…たすけたい。」

 クイッと俺の服を引っ張りながら、メリッサがそう言った。

「あぁ、俺もだ。」

 ポンポンとメリッサの頭を撫でながら、俺も同意する。彼らには個人的に自由に生きてもらいたいからな。

「じゃあ、取りあえず君達を捕まえに来てる漁船の特徴とか、それに乗ってる人がどんなやつか教えてもらえないか?」

「えっとですね。」

 そして彼はいつも襲ってくる人間の特徴を話し始めた。

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