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第四章

リリンのお気に入り

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 いただきますと挨拶をした後、我慢の限界だったランはすぐにフリッターを取って口へと運んだ。

「ん~♪中からジュワッと肉汁が溢れ出してきて、とっても美味しいわ。何個でも食べれちゃうわね!!」

「急いで食べて喉に詰まらせないようにな?」

「わかってるわ~♪あ~んっ……んふ~、最高ね。」

「確かにランさんの言うとおり、これは私でもたくさん食べれちゃいますね。」

「我もたくさん食べるぞ!!」

「自分も食べるっす~!!」

 ランに負けじとイリスやシン、更にはグレイスまでもフリッターに飛び付いた。

 そんな中、

「これ、すごいプルプルだねぇ~。スライムみたいだよ。」

「すっごく美味しいの!!シアこれ大好きっ!!」

「ぷるぷる…おいしい。」

「ボクもこれ好きだな~。口のなかで蕩けるみたいで不思議だけど、とっても美味しいよ。」

 ドーナ達は茶碗蒸しが気に入ったようだな。今まで食べたことがないような食感だろうから、それも相まってるんだろう。

 そうやってみんなのことを見ていると、ツンツンと誰かが俺の腕をつついた。

「ちょ、ちょっといいかしら?」

「ん?どうしたんだ?」

 腕をつついていたのはリリンだった。どうかしたのだろうか。

「あ、あなた……そ、その、それ食べないの?」

 恐る恐ると言った感じで、リリンは俺の茶碗蒸しを指差して言った。まさかと思い、彼女の茶碗蒸しを見てみると、思った通り既にすっからかんだった。

「……食べたいのか?」

「そ、そんなことない…わよ?ただ、あなたがそれ食べないなら勿体無いから、私がもらってあげるって話。」

 少し恥ずかしそうにリリンは言った。別にあげてもいいんだけど……ちょっとイタズラしてみるか。

「勘違いさせてすまないな。今食べるところだったんだ。」

 パカッと茶碗蒸しを開けてスプーンを近づけると、リリンの表情がどんよりと沈み始めた。

「あ…う……。」

「ふっ、冗談だ。ほら、食べてもいいぞ。」

 もう少しリリンの表情を見ていたかったが、これ以上いじると大変なことになりそうだったから、素直に渡した。

「え……い、いいの?」

「あぁ、構わない。」

 茶碗蒸しを受け取ったリリンは夢中になって食べ始めた。どうやらとても気に入ってくれたらしい。

 この分ならプリンとか作っても喜んでくれるのではないだろうか。満面の笑みで茶碗蒸しを食べるリリンを見て、そんなことを思うのだった。
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