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第四章

仕事が……

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 一度手を止めて、シアとメリッサの方に足を運ぶ。

「どうだ?二人とも。」

「あっ!!お兄さん!!」

「ぱぱ…これで…さいご。」

 メリッサが器にトクトクと卵液を注ぎ、最後の一個の茶碗蒸しの準備が完了した。

「二人ともありがとう。よく頑張ったな。」

 ポンポンと両手で二人の頭を撫でる。頑張った御褒美だ。

「えへへぇ~♪やっぱりシア、お兄さんのお手々大好きっ!!」

「もっと…なでて。」

 頭を撫でると、二人はほわ~…っと表情を緩ませ、気持ち良さそうにしている。

 とてもかわいい。

「おっと、じゃあこっちも完成させないとな。ちょっと危ないから二人とも離れてるんだぞ?」

「うん!!」

「わかった。」

 二人が離れたことを確認して、俺はバーナーに火をつけ、茶碗蒸しの表面をさっと熱した。こうすることで、表面にできた気泡が割れて、なだらかな見映えにすることができる。

「よしっ、後はスチコンを80℃に設定して……10分ぐらい蒸せばいいな。」

 スチームコンベクションオーブンを80℃の水蒸気モードに設定して、茶碗蒸しを蒸す。この時、蓋の上からアルミホイルを覆い被せてあげることで、水蒸気の水滴が器の中に落ちなくなる。

「お兄さん!!後はお手伝いできることある?」

「う~ん、そうだな。じゃあ味噌汁を盛ってくれるか?」

「わかった!!」

「わたしも…てつだう。」

 そしてシア達は、先ほど出来上がっていた味噌汁をお椀に盛り付け始めた。

 本当にいい子たちだな……。

 そんなことを思いながら二人を見ていると、俺はあることに気が付いた。

 ……あれ?今回全然仕事が回ってこないな。あ、ご飯炊き上がったから盛り付けようか。

 ご飯が炊き上がったことを確認したので、盛り付けようとすると……。

「ぱぱ…それも…わたしたちが…やる。」

「あ、あれ?もう味噌汁盛り終わったのか?」

「いま…しあちゃんが…もってった。」

「あ、はい。」

 ちょっと目を離した隙に、味噌汁が盛り終わっていたとは……予想外だ。いよいよやることがないぞ。

 洗い物も出たそばから片付けてたし、ドーナ達はもう揚げ終わりそうだし……。茶碗蒸しが蒸し上がるまで待つだけになってしまったな。
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