転生料理人の異世界探求記（旧 転生料理人の異世界グルメ旅）

第四章

焼き上げ

　そして三種類のピザを盛り付け終わった頃、オーブンの中の温度も上がりきり、余熱が終わる。

　ピザを鉄板の上にのせて、オーブンの中へと入れていく。発酵させる時間が少なかったのが唯一の懸念だな。まぁでも、ある程度膨らんで発酵は進んでいたようだから……大丈夫だと思う。

「上手く焼き上がればいいな。」

　美味しく焼き上がることを切に願いながら、後片付けを始めた。10分位したら様子を見てみよう。それまではオーブンの温度を下げないために放置だ。

「タイマーをセットして…これでよし。」

　さ、後は待つだけだ。片付けも終わったし、一杯コーヒーでも飲むか。前掛けを外し、俺はホールにあるコーヒーメーカーへと向かった。

「お兄さん！！ご飯できた？」

　厨房から出るとシアが真っ先にこちらへと向かってきた。

「あともうちょっとでできるぞ。もう少し我慢してくれ。」

「うん！！」

　ポンポン……とシアの頭を撫でてコーヒーメーカーへ行こうとすると、目の前にメリッサが立ちふさがった。

「ん…。」

　そしてスッ…とこちらに頭を差し出してくる。どうやらシアが撫でられたのを見て、自分も撫でてほしくなったらしいな。
　意思を汲み取って、メリッサの頭も撫でてあげた。

「ふふ…ぱぱ…ありがと。」

　メリッサは少し頬を赤く染めながらお礼を言った。

　するとそんなメリッサの姿を見て、ラン達が騒ぎ始める。

「ね、ねぇドーナ！！ワタシ達も、もっとあんな感じでグイグイ行った方が良いのかしら！？」

「アタイ達もだいぶ攻めてる気はするんだけど……。」

　そんな様子に思わず苦笑いしながら、マグカップにコーヒーを注ぎ、それを味わいながら飲んでいると……。

「ぱぱ…それ…おいしい？」

　コーヒーが気になったらしく、メリッサが俺のマグカップを指差して言った。

「ん～、俺は美味しく感じるけど……メリッサにはまだちょっと早いかな？」

「ちょっと…のみたい。」

　メリッサがそう言うと、シアが必死になって止め始めた。
 
「メリッサちゃん絶対やめた方がいいよ！！あれすっ……ごく苦いの！！」

「う…じゃあ…やめる。」

　シアの言葉を聞いて大人しくメリッサは引き下がった。コーヒー牛乳みたいにすれば飲めると思うけど……さすがにブラックコーヒーは子供にはまだ早すぎる。

　そしてコーヒーを飲み終わる頃、設定していたタイマーが厨房に鳴り響いた。