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第四章
マーレの拠点
しおりを挟む酸のスライムを倒すと、グレイスが馬車を引っ張ってこちらに近づいてきた。
「あ、相変わらずとんでもないブレスの威力っすね。一瞬でこんなにカチコチになっちゃったっす。」
ツンツンとグレイスが散らばったスライムの破片を爪でつつきながら言った。
「グレイスだってブレス使えるだろ?」
「自分のはこういうのしかできないっす。」
グレイスは大きく口をあけて空へと向かって炎を吐き出した。
「ヒイラギさんみたいにいろんなブレス使いたいっすけど、今自分が吐けるのはこれだけっす。」
ボハ~ッと再び空へむかってグレイスは炎のブレスを吐いた。
「まぁ、いろんな種類のブレスを使えるようになるのも便利だと思うが……ある一つのブレスを極めても強いと思うぞ?」
広く浅く何かを習得するより、狭く深くやった方がいいと俺は思っている。いろんなものに手を出すのを悪いとは言わない。ただ、まずは一つを極めたあと、少しずつ根を広げていった方が速くいろんなものを習得できると思う。一つを極めるまでに積み重ねた経験というのが、どこかで使えることがあるはずだしな。
「そうっすかねぇ~。」
「ま、気長にゆっくりやればいいと思うぞ?」
特に急ぐ必要もないだろうしな。
「さ、ひとまずハウスキットを建ててしまうぞ。グレイスもそろそろお腹減ってきただろ?」
「減ったっす!!」
バッグからハウスキットを取り出して展開する。そして馬車の中にいるみんなに声をかけた。
「みんな着いたぞ。」
「もう着いたのかい?流石はグレイスだよ、馬なんかとは比べ物にならないぐらい早く着いたね。」
「ふっふ~ん、まぁこのワタシが選んで連れてきただけあるわね。」
「グレイスお疲れ様!!」
「おつかれ…さま…いいこ。」
みんな馬車から降りるときに、グレイスを撫でながらお礼を言っていた。
「あれ?お兄さん海は?」
「そこの頂上から、あっちの方を見れば見えるぞ。滑るかもしれないから気を付けてな?」
「うん!!メリッサちゃん行こ?」
「うん。」
シアはメリッサと共に手を繋いで丘の一番高いところへと走っていった。それを眺めていると後ろからシンとリリンに話しかけられた。
「当分はここを拠点にするのだな?」
「あぁ、ひとまずは…な。」
「ひとまず…ってことは移動する可能性もあるってことね?」
「そうだな。だが、その時は例の人が協力してくれなかったときだ。」
無理矢理協力をさせるのは筋違いだし……。もし協力してくれなくても、違うやり方はある。
「ま、今は取りあえず休もう。二人も中に入ってていいぞ。俺はシア達を見張ってないといけないからな。」
「うむ、では先に休ませてもらおう。」
「今日のお昼ごはんも楽しみにしてるわ。」
そして二人は中へと入っていった。その後、俺は海を眺めてはしゃぐ二人を見守っていた。
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