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第四章
ミルタとの会談
しおりを挟む浅い眠りに落ちていると、バッグの外から声が聞こえた。
「ヒイラギ、着いたよ。」
どうやら着いたらしいな。寝転がっていた体を起こして、バッグの出口へと向かう。
「いよっと。」
バッグから身を乗り出すと、みんなが俺を取り囲んでいた。
「みんなありがとう。」
「このぐらいどうってことないわ。」
「そうだよ、ほら早くミルタの店に行こうじゃないか。」
「あぁ、そうだな。」
人気のなかった裏路地から大通りに出て、俺たちはミルタさんの店へと入った。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
店の中へと入ると、以前と違う従業員の人がこちらを出迎えた。
「ミルタさんに用事があるんだが……。」
「会長にご用事ですか?失礼ですが、面会のご予約はされていましたか?」
「してないんだが、取りあえずヒイラギが来たってミルタさんに伝えてもらえるか?」
面会の予約が必要なんて聞いてないぞ。だが、きっと俺の名前を聞けば会ってくれるはずだ。
そして店の従業員の人が、俺の名前を伝えに行って少しすると、ミルタさんがドタドタと慌てた様子で階段をかけ降りてきた。
「おぉ!!ヒイラギさん、ようこそいらっしゃいました。」
「お久しぶりです。今日はちょっと折り入って話があるんですが…時間ってありますか?」
「もちろんですとも。ささ、こちらへ。」
ミルタさんに接待用の部屋へと案内される。シュベールのお店ほど豪華ではない部屋だが、逆に俺はこっちの方が落ち着くな。
「すぐに紅茶と菓子を持ってこさせますので。」
それから少しすると、従業員の人が人数分の飲み物とお菓子を運んできた。
「そういえばヒイラギさん、そちらのお子さんは……。」
「この子は親戚の子で、訳あって今預かっているんです。」
「そうでしたか。」
まさか魔物の子供です……なんて口が裂けても言えるわけないからな。取りあえず以前使った決まり文句でここは乗り切る。
「それで話とは何でしょうか?」
「……ミルタさんは、この前国王が出した戦争の宣言をどう思います?」
「あれですか、私共としてはあまり嬉しいものではありませんな。あれのせいで、日々いろんな物の物価が上がっているので、取引が大変なんですよ。」
はぁ……と大きなため息を吐き出しながら、ミルタさんは言った。
やっぱりこの事を良くは思っていないらしい。それがわかったところで、いよいよ本題に入ろうか。
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