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第四章
ぱぱ
しおりを挟む私を育てろ……確かにこの少女はそう言った。初対面の相手にそんなこと頼むか!?いや、それよりもだ……人間が魔物を育てるなんてことできるのか?
「ま、待ってくれ。どうしてそんなに俺たちを信用できるんだ?」
「はち…たちが…つれてきた…から。きけん…なにんげん…はちたち…つれてこない。」
なるほど、最初あのハチがじっとこっちを見ていたのは、危険な人間か判断するためだったのか。
「じゃあ質問を変えよう。今あそこで待ってるハチじゃ君を育てることはできないのか?」
「むり。」
そう聞くと少女はきっぱりと無理と言った。
「ここ…えいよう…たりない。わたし…おおきく…なれ…ない。」
「なるほど。」
そういうことだったのか、確かにここの部屋には花や木しかない。栄養が足りないということはわからなくはないが……。さて、どうしたものかな。
「みんなはどう思う?」
「ワタシは別にいいと思うわよ?」
「アタイもランと同意見だよ。こんな小さい女の子を見捨てるのは、流石に気が引けるよ。」
二人はどうやら賛成のようだ。シアはどう思っているだろうか……。そしてさっきまでシアがいたところに目線を向けるが、そこにはシアの姿はなかった。
まさかと思い、例の少女の方に目を向けると、シアが少女と会話をしていた。
「ねぇねぇ、お名前はなんていうの?」
「なまえ…ない…。」
「ふえっ!?ないの!?」
「うん。」
それを聞いたシアは、すぐにこちらに駆け寄ってきた。
「ねぇお兄さん……。」
「どうしたんだ?」
「あの子のお名前、考えてあげて?」
どうやらシアも、この子を見捨てるのは反対のようだな。
まぁ俺としてもドーナの言うとおり、こんな幼い子を見捨てるのは気が引けてしまう。皆も賛成のようだし……これは決定だな。
「わかった。」
「え…なまえ…くれる…の?」
「あぁ、これから一緒に暮らすのに名前がないと不便だからな。」
自分を育ててくれるということがわかった少女は、一気に表情が明るくなった。
「あり…がとう…ぱぱ?」
「「「ぱっ……パパ!?」」」
パパという言葉に、俺を含めドーナとランの二人も驚きで固まる。
「わたしを…そだてて…くれるから…ぱぱ。へん…?」
「う~ん、育ての親という意味では変ではないが……。」
「じゃあ…ぱぱ。けってい。」
嬉しそうな顔をしながら、少女は俺の方に駆け寄ってくると、ぎゅっと抱きついてきた。
こうして今日ここにヒイラギの娘(仮)が誕生したのだった。
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