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第四章
シンと共に降り立つ人間の国
しおりを挟む軽い昼食を挟みながら進むこと数時間ほどで、正面にわずかな陽の光が射し込んでいるのが見えてきた。
「おっ?どうやら出口が近づいてきたらしいぞ。」
「む?ようやくか。」
「な、長かったわ……。足がもう重たくなってきたところだったわよ。」
シンとリリンには少し疲労が見られるな。途中リリンはライラにおぶってもらってたし、やはり数時間徒歩で進むのは苦労するな。
光の射す方へと足を進めると階段が現れた。あとはここを上って、上にある扉を開ければ出られる。
階段を上ってスライド式の出口を開けると、一気に光が差し込んできた。
「ようやく着いた。」
俺の後に続き、みんなも外へと出てくる。するとシンはスンスンと鼻をならしたり、辺りをキョロキョロと見渡し始めた。
「む、意外とこういう環境は我が国と変わらんのだな。」
「まだここは森の中だからな。森なんてどこの国もほとんど同じようなものだろ。」
「それもそうであるな。」
「そ、それはそうと…ちょっと休憩しない!?もう私の足がパンパンよ!!」
階段を上るときに最後の力を使ってしまったのか、リリンはその場にへたりこんでしまった。
「そうだな、それじゃ一度ハウスキットの中で休憩してからまた行動を始めるか。」
手頃な広さのところでハウスキットを使う。するとリリンが真っ先に中へと入りソファーの上にゴロンと横になった。
「はぁ~、もうダメ。私今日はもう歩けないわ。」
「お姉様情けな~い……本当は言いたかったけど、実はボクもちょっと足が限界かな。」
「そうか。ならシンとリリン達はここで休んでてくれ。」
「むっ!?なぜ我も休まねばならんのだ?」
「いきなり人間の街にシンが姿を表したらどんなことになると思う?」
「むぅ、それは……。」
シンもどうなるかは想像がついたらしい。
「今はまだ騒ぎを起こしたくない。わかってくれ。」
「わかった。では我はひとまずここで疲れを癒しているとしよう。」
渋々といった感じで承諾してくれた。まぁ今後、人間の王と会談して自由に行き来できるようになれば、出歩いても大丈夫だろう。それまでの辛抱だ。
「あぁ、そうだ。ライラもなるべく…というか人前には姿を見せないようにな?」
「無論、承知している。」
「それじゃ俺たちは街へ出掛けて、食材の買い出しとかしてくるか。」
ドーナ達と街へ出掛けようとしていたとき、あることをリリン達に伝えるのを忘れていた。
「あぁ、そうだ。もしも人が来たりして扉をノックされても応答しなくていいからな?」
無駄な人との接触は避けたい。もしそれでシンやライラのことが人の目についたら、問題になるからな。
「言われなくても出ないわよ~。ほら早く行ってきなさい。」
「それじゃ頼んだぞ。」
留守をリリン達に任せ、俺たちは街へと向かった。
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