転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
475 / 1,052
第四章

シンと共に降り立つ人間の国

しおりを挟む

 軽い昼食を挟みながら進むこと数時間ほどで、正面にわずかな陽の光が射し込んでいるのが見えてきた。

「おっ?どうやら出口が近づいてきたらしいぞ。」

「む?ようやくか。」

「な、長かったわ……。足がもう重たくなってきたところだったわよ。」

 シンとリリンには少し疲労が見られるな。途中リリンはライラにおぶってもらってたし、やはり数時間徒歩で進むのは苦労するな。

 光の射す方へと足を進めると階段が現れた。あとはここを上って、上にある扉を開ければ出られる。

 階段を上ってスライド式の出口を開けると、一気に光が差し込んできた。

「ようやく着いた。」

 俺の後に続き、みんなも外へと出てくる。するとシンはスンスンと鼻をならしたり、辺りをキョロキョロと見渡し始めた。

「む、意外とこういう環境は我が国と変わらんのだな。」

「まだここは森の中だからな。森なんてどこの国もほとんど同じようなものだろ。」

「それもそうであるな。」

「そ、それはそうと…ちょっと休憩しない!?もう私の足がパンパンよ!!」

 階段を上るときに最後の力を使ってしまったのか、リリンはその場にへたりこんでしまった。

「そうだな、それじゃ一度ハウスキットの中で休憩してからまた行動を始めるか。」

 手頃な広さのところでハウスキットを使う。するとリリンが真っ先に中へと入りソファーの上にゴロンと横になった。

「はぁ~、もうダメ。私今日はもう歩けないわ。」

「お姉様情けな~い……本当は言いたかったけど、実はボクもちょっと足が限界かな。」

「そうか。ならシンとリリン達はここで休んでてくれ。」

「むっ!?なぜ我も休まねばならんのだ?」

「いきなり人間の街にシンが姿を表したらどんなことになると思う?」

「むぅ、それは……。」

 シンもどうなるかは想像がついたらしい。

「今はまだ騒ぎを起こしたくない。わかってくれ。」

「わかった。では我はひとまずここで疲れを癒しているとしよう。」

 渋々といった感じで承諾してくれた。まぁ今後、人間の王と会談して自由に行き来できるようになれば、出歩いても大丈夫だろう。それまでの辛抱だ。

「あぁ、そうだ。ライラもなるべく…というか人前には姿を見せないようにな?」

「無論、承知している。」

「それじゃ俺たちは街へ出掛けて、食材の買い出しとかしてくるか。」

 ドーナ達と街へ出掛けようとしていたとき、あることをリリン達に伝えるのを忘れていた。

「あぁ、そうだ。もしも人が来たりして扉をノックされても応答しなくていいからな?」

 無駄な人との接触は避けたい。もしそれでシンやライラのことが人の目についたら、問題になるからな。

「言われなくても出ないわよ~。ほら早く行ってきなさい。」

「それじゃ頼んだぞ。」

 留守をリリン達に任せ、俺たちは街へと向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...