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第四章

イリス初めての炒め物②

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 もう切るものはない。これでイリスの方に集中できるな。

「よし、それじゃ次はそっちのフライパンを火口に置いて、さっきみたいに油を馴染ませてくれ。」

 二つ目のフライパンを用意した理由は挽き肉を炒めるためだ。合挽き肉は焼いたときに出てくる油に臭みがある。今回のタコライスのように挽き肉が主体となる料理では、なるべくその油は取り除きたい。

「そしたら挽き肉を入れて炒めてくれ。火が通ると固まり始めるからほぐしながらな?」

「わ、わかりました。」

 恐る恐るといった感じで、イリスは挽き肉をフライパンに入れようとしている。

「イリス、怖がってやってると怪我するぞ?ゆっくり怖がらずにやるんだ。逆に怖がって焦ってやると、油が跳ねてあぶないぞ?」

 初めて料理をする人がやってしまう失敗例で、熱したフライパンや油を怖がって、食材をポイって投げ入れてしまう人がいる。
 あれだと逆に油が自身の方に跳ねてきて火傷をしてしまう可能性が高くなってしまうのだ。

 そしてイリスは俺の指示に従って、ゆっくりと熱されたフライパンに挽き肉の塊を入れた。

「い、意外とパチパチ跳ねてこないんですね?」

「今みたいにゆっくりと入れれば、突然跳ねてくるなんてことはほとんどないよ。ほら、挽き肉をほぐしながら炒めるんだ。」

 ほぐしながら暫く炒めていると、少し濁った油がフライパンの底に染みだし始めた。これが臭みの原因となる油だ。

「イリス、そしたら肉をフライパンのふちに集めて、出てきた油を中央に集めてこれで拭き取ってくれ。」

「わかりました。」

 たたんだキッチンペーパーをイリスに渡し、フライパンにたまった臭みのもとの油をきっちり取り除いてもらう。

「よし、そしたらさっき炒めた玉ねぎを入れて味をつけていくぞ。」

「あ、あの…味ってどれでつければいいんですか?」

「ここにある調味料で味をつけるんだが、まず最初はカレー粉から入れて炒めてくれ。」

 そしてイリスは玉ねぎを挽き肉を炒めているフライパンに入れて、そこにカレー粉を振りかけた。

「うん、そのぐらいでいいぞ。そしたら少し炒めてスパイスの風味を出してから、他の調味料を入れる。」

「香りが出てきたら他のを入れればいいんですね?」

「その通り。分量は俺がストップって言うまで入れて構わないからな。」
 
 ぎこちない手つきながらもイリスは次々に調味料を入れて挽き肉に味をつけていった。そして全ての調味料を入れ終わり……。

「じゃあ試しに味見してみてくれ。イリスが美味しいならそれでいいし、ちょっと味が薄かったり濃かったりしたら調整して構わない。」

「わ、わかりました。じゃあいただきます。」

 イリスはスプーンで挽き肉を少し掬って口へと運ぶ。すると、パチッと目を見開いた。

「ん!?お、美味しいです!!」

「そうか、なら良し。さぁ冷める前に盛り付けるぞ。」

「はいっ!!」

 初めて火口で調理をしたにしては、悪くない感じだったな。これだったら、これから少しずつ火口の調理をやらせてみてもいいかもしれない。
 そんなことを思いながら、イリスと共に出来上がったタコライスを盛り付けるのだった。
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