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第四章
足りない布団
しおりを挟む「ふん!!今日はこのぐらいにしといてあげるよ。」
そしてフレイは握っていたコウモリをポイッとソファーへ向けて放り投げた。無惨にも放り投げられたコウモリは、ソファーの上で暫くピクピクと痙攣している。
さんざんフレイに苛めぬかれていたからな。
「なぁフレイ、やっぱりこれって。」
「お姉様だよ?この感じだと暫く元に戻れないんじゃないかな?」
あぁ、やっぱりそうか。あの分裂は便利な反面、本体が見極められたらどうしようもなくなってしまう。まぁ初見ではまず見切れないだろうからかなり強い技ではあるんだがな。
「そうか、でもまぁほっとけば元に戻るんだろ?」
「うん、自分で動けるようになればね。」
それなら一応体が冷えないようにタオルだけかけてやるか。朝起きて風邪引かれてても困るしな。
近くにあった乾いたタオルを一枚リリンに被せた。
「あ、あの……ヒイラギさん?」
「ん?どうかしたのか?」
「じ、実はさっきのお姉様との喧嘩で結構血を使っちゃって…。」
えへへ…と頭の後ろに手をあてながらフレイは言った。
「あぁそういうことか。加減してくれるなら吸ってもいいぞ。」
「ほ、ホント!?ありがとう!!」
そして俺は再びフレイに自らの血を差し出した。
それからしばらくすると、満足した表情でフレイは肩から口を離した。
「ん~、ぷはぁっ!!ごちそうさま!!」
「もう満足か?」
「うん!!バッチリだよ~。」
よし、それじゃフレイの食事も無事終わったしそろそろ寝るとするか……。
「さて、それじゃ布団を敷くぞ~」
一度床をしっかりと掃除してから床に布団を並べた。そしてある問題が発生する。
「……布団が足らない。」
この旅をしているメンバーに対して布団の数が足りていないのだ。
「取りあえず女性陣は全員入れそうだから……女性陣は布団で寝てもらって。」
「我とヒイラギはどうするのだ?」
「決まってるだろ?そこのソファーだよ。」
そう言って俺は先程まで座っていたソファーを指差した。 一国の王であるシンをここに寝かせるのはこちらとしても心が傷むが……ないものはないのだ。
「大丈夫だ。意外と寝心地いいんだぞ?」
このハウスキットのソファーは、いい素材を使っているため非常に座り心地も寝心地も良いのだ。仕事をしていた頃、何度もお世話になっている。
寝相が悪かったら落ちるかもしれないがな……。
「シア、お兄さんと寝たいっ!!」
「うーん、今日は我慢してくれないか?明日は一緒に寝られるから…なっ?」
「ホントに今日だけ?」
「あぁ、明日あっちに着いたらちゃんと布団を買ってみんなで寝れるようにする。約束だ。」
「わかった!!」
何とかシアを説得しドーナ達と一緒に布団で寝てもらうことになった。あっちに行ったら先ずは布団を買うことから始めないとな。
ミルタさんにも連絡を取らないといけないし……やることがいっぱいだ。明日の予定を考えながら、俺はソファーに横になり目を閉じた。
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