上 下
470 / 973
第四章

足りない布団

しおりを挟む

「ふん!!今日はこのぐらいにしといてあげるよ。」

 そしてフレイは握っていたコウモリをポイッとソファーへ向けて放り投げた。無惨にも放り投げられたコウモリは、ソファーの上で暫くピクピクと痙攣している。

 さんざんフレイに苛めぬかれていたからな。

「なぁフレイ、やっぱりこれって。」

「お姉様だよ?この感じだと暫く元に戻れないんじゃないかな?」

 あぁ、やっぱりそうか。あの分裂は便利な反面、本体が見極められたらどうしようもなくなってしまう。まぁ初見ではまず見切れないだろうからかなり強い技ではあるんだがな。

「そうか、でもまぁほっとけば元に戻るんだろ?」

「うん、自分で動けるようになればね。」

 それなら一応体が冷えないようにタオルだけかけてやるか。朝起きて風邪引かれてても困るしな。

 近くにあった乾いたタオルを一枚リリンに被せた。

「あ、あの……ヒイラギさん?」

「ん?どうかしたのか?」

「じ、実はさっきのお姉様との喧嘩で結構血を使っちゃって…。」

 えへへ…と頭の後ろに手をあてながらフレイは言った。

「あぁそういうことか。加減してくれるなら吸ってもいいぞ。」

「ほ、ホント!?ありがとう!!」

 そして俺は再びフレイに自らの血を差し出した。

 それからしばらくすると、満足した表情でフレイは肩から口を離した。

「ん~、ぷはぁっ!!ごちそうさま!!」

「もう満足か?」

「うん!!バッチリだよ~。」

 よし、それじゃフレイの食事も無事終わったしそろそろ寝るとするか……。

「さて、それじゃ布団を敷くぞ~」

 一度床をしっかりと掃除してから床に布団を並べた。そしてある問題が発生する。

「……布団が足らない。」

 この旅をしているメンバーに対して布団の数が足りていないのだ。

「取りあえず女性陣は全員入れそうだから……女性陣は布団で寝てもらって。」

「我とヒイラギはどうするのだ?」

「決まってるだろ?そこのソファーだよ。」

 そう言って俺は先程まで座っていたソファーを指差した。 一国の王であるシンをここに寝かせるのはこちらとしても心が傷むが……ないものはないのだ。

「大丈夫だ。意外と寝心地いいんだぞ?」

 このハウスキットのソファーは、いい素材を使っているため非常に座り心地も寝心地も良いのだ。仕事をしていた頃、何度もお世話になっている。
 寝相が悪かったら落ちるかもしれないがな……。

「シア、お兄さんと寝たいっ!!」

「うーん、今日は我慢してくれないか?明日は一緒に寝られるから…なっ?」

「ホントに今日だけ?」

「あぁ、明日あっちに着いたらちゃんと布団を買ってみんなで寝れるようにする。約束だ。」

「わかった!!」

 何とかシアを説得しドーナ達と一緒に布団で寝てもらうことになった。あっちに行ったら先ずは布団を買うことから始めないとな。 
 ミルタさんにも連絡を取らないといけないし……やることがいっぱいだ。明日の予定を考えながら、俺はソファーに横になり目を閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

料理を作って異世界改革

高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」 目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。 「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」 記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。 いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか? まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。 そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。 善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。 神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。 しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。 現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...