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第四章
リリンの失敗
しおりを挟むリリンへと大鎌を向けていたフレイが、突然驚いたようにこちらへと走ってくる。
「~っ!!ヒイラギさん!!」
「どうかしたのか?」
フレイが俺の肩を震えながら指差している。目線を肩の方へと向けると……。
「キィ!!」
「いつの間に。」
いつの間にやら、肩に一匹のコウモリがいた。どうやらさっきまで俺の血を吸っていたらしい。痛みとか全然なかったからわからなかった。
「フフフ、戻ってきなさい。」
ハウスキットの中に入ってきたリリンは、クスクスと笑いながらそう言った。すると俺の肩にとまっていたコウモリがリリンの元へと羽ばたき、そして彼女に吸収された。
「ん~っ、あら?前より美味しくなってるじゃない、どうしてかしら?」
コウモリを吸収したリリンはペロッと舌を出しながら言った。彼女曰く以前俺の血を飲んだ時よりも美味しくなっているらしい。
「お姉様っ!!それは卑怯だよ!!」
「あら、私は吸血鬼よ?吸血鬼がコウモリを使役して何が悪いのかしら?」
「そうやってお姉様はいっつもボクの物を壊したり奪ったり……もう許さないんだからっ!!」
フレイが涙目になりながら、リリンに向かってとても怒っている。そしてフレイはリリンに向かって持っていた大鎌を振り下ろした。
ハウスキットの中ということもあって、避けるスペースがなかったリリンは……。
「フフフ♪そんな大振りじゃ当たらないわよ?」
体を何匹かのコウモリに分裂させフレイの攻撃をかわした。
「またかかったね…お姉様。」
分裂したコウモリがリリンの姿を形作ろうとしている最中、フレイはそこに向かって鎌を突きつけた。
「君の主を捕まえて。」
フレイがそう呟くと鎌から無数の触手が伸びて、コウモリの群れの中へと突っ込んでいった。そしてシュルシュルと音をたてて触手が戻ってくると、一匹のコウモリが触手に絡めとられていた。
「ありがと、いい子だね。」
フレイは鎌を撫でてから、その絡めとられていたコウモリを手中に収めた。
「あっはは♪お姉様ぁ……忘れたの?こ~れっ、今は支配権はボクにあるけど…お姉様の血でできた武器だよね?」
「キ、キィ。」
「そう、そのまさかだよ?分裂したコウモリの中からお姉様を見つけ出すのは大変だけど……この子に探してもらえばね?」
クスクスと笑うフレイの目からだんだん光が消えていく。それを目の当たりにしているコウモリはカタカタと震えていた。
「覚悟はいいかなぁお姉様?」
その夜一匹のコウモリの悲鳴が辺りに木霊した。
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