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第四章
フレイの反抗期
しおりを挟む夕食を食べ終わった後、みんなシャワーも浴びて残すところは寝るのみとなった。布団を敷いて、寝る準備を整えているとフレイがこちらに歩み寄ってきた。
「あっヒイラギさん、寝る前に…。」
「あぁ、吸血か。あそこでやろう。」
みんなから見えない位置にあるソファーに座り、上着を少し脱いで肩を露出させた。すると、フレイは俺の太ももの上に座ってきた。
「そ、それじゃあ…いただきます。」
彼女の口が肩に触れるとほぼ同時、肩が熱くなる。そしてゆっくりとフレイの吸血が始まった。
「んくっ、んくっ……。ぷはぁっ、やっぱりヒイラギさんは甘くてとってもおいしいよ。」
少し血を飲んでから、フレイは一度口を離してそう言った。
「だからダメだよ?自分のことを美味しくないなんて言っちゃ…ね?」
「あぁ、わかったよ。」
そう答えるとフレイは満足したようにうなずき、再び肩に口を付け吸血を再開した。
「フレイにもいい血の提供者が見つかってよかったわ。」
いつの間に近寄ってきていたのか、まじまじと隣のソファーからリリンがこちらを見ていた。
「そんなにまじまじと見られると恥ずかしいんだが?」
「あらいいじゃない?別に減るものでもないんだから。それにしても…フレイったら本当に美味しそうに飲むわね~。」
一心不乱にごくごくと俺の血を飲むフレイを見てリリンは言った。
「私も少しかじってもいいかし……。」
「ダメっ。」
かじってもいいかと聞こうとしたリリンをフレイはジト目で拒絶する。
「お姉様にはライラがいるでしょ?」
「た、確かにそうだけど……気になるじゃない?」
「ヒイラギさんの血は甘くてとっても濃厚で美味しいよ?はいこれで味がわかったからいいでしょ?」
フレイの辛辣な言葉に思わず固まったリリンだったが、すぐに正気を取り戻し反論し始めた。
「フレイ、それはちょっとかわいくないわよ?別にヒイラギ本体を要求しているわけじゃないんだから、ちょっとぐらいいいじゃない?」
「いくらお姉様でもこれだけは譲れないなぁ。」
な、なんか物々しい雰囲気になってきたぞ?
フレイはおもむろに吸血をやめると、スッと立ち上がりリリンと向き合った。
「あらあら、遅めの反抗期かしら?姉の言うことはちゃんと聞くべきよ?」
「いつまでもお姉様の言うことばっか聞いてるのも面白くないからね。たまにはボクの言うことを聞いてもらうよ!!」
そしてリリンとフレイは二人で外へと出て行ってしまった。
……だ、大丈夫だろうか。不安だ。
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