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第四章

辛さの誘惑

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 できあがった麻婆豆腐をみんなの元へと運ぶ。

「ほら、シア起きて?ご飯できたわよ?」

 ユサユサとランがシアの肩を揺すって起こそうとするが、なかなかシアが起きないようだ。よっぽど疲れてしまったのだろうか。

「起きそうにないか?」

「うん。」

 スヤスヤと寝息をたてているシアだが、よく見ると俺は一つ異変に気が付いた。耳や尻尾が僅かに動いているのだ。それに口角も少し上がっていて笑っているようにも見える。

 これはもしかして……。

「そうか、じゃあシアの分のご飯誰か代わりに食べるか?」

「じゃあ自分が食べ……。」

「ダメッ!?」

 真っ先にグレイスが答えている最中、シアがガバッと飛び起きた。思った通り狸寝入りだったようだ。

「あっ。」

「おはようシア。」

「ふにゅ~、お兄さんどうしてわかったの?」

「そりゃあわかるさ、耳と尻尾がピクピク動いてたからな。」

 そう指摘すると、シアは自分の頭の上にあるピコピコ動く可愛らしい耳を両手で押さえつけた。

「シアもお腹空いてるだろ?早く食べよう。」

「うん!!」

 そしてみんないつものテーブル席に座り、食べる準備ができたところで手を合わせると、みんなも続いて手を合わせる。

「それじゃ、いただきます。」

「「「いただきま~す!!」」」

 恒例となった挨拶と共に、みんなが麻婆豆腐を口へと運んでいた。

「むぅ!?し、舌がヒリヒリするのだ!?」

「そういえばシン達には辛い料理ってまだ作ってなかったな。苦手だったか?」

「いや、驚きはしたが……なんというか、こう病みつきになる美味しさだ。」

「食べれば食べるほどピリピリするけど、すっごく美味しい…不思議な料理だね~。」

「ふふん!!わ、私はこのぐらいどうってことないわよ!!」

 リリンはそう言いながらも、手元にある水をごくごくと飲み干していた。完璧な強がりである。そんなに辛味を強くしたつもりはないんだが、リリンには少々辛かったらしいな。

「お兄さん!!これご飯と一緒に食べるとスゴく美味しいの!!」

「前のエビチリでもそうだったけれど、この辛いって味はどうしてかはわからないけれど食べる手が止まらなくなっちゃうわね。」

「アタイはこの味大好きだよ。もっと辛くてもいいかもねぇ。」

 麻婆豆腐の受けはよく、辛い料理に初挑戦だったシンやリリン達もすっかり魅了されたようで、何回かおかわりをしていた。
 あとはしっかりと今日睡眠が取れれば、疲れはある程度回復できるはずだ。
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