転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

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第四章

漂うナニカ

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 あれからまた少し時が経ち、いよいよ完全に陽が落ちてしまった。
 辺りは完全に真っ暗だ。

 さっきグレイスにゴーストの話を聞いた後だから、辺りの不気味さに余計に拍車がかかり、ついついキョロキョロと見渡しがちになってしまう。

 怖い話を聞いた後に、夜中トイレに起きるのが怖いのと同じ現象だ。

「グレイス、ちゃんと前見えてるか?」

「大丈夫っす~。自分夜目は利く方なんで。」

「それならいいんだが……。」

 この暗さは並みの人間では、慣れるまでにかなり時間を要するだろうな。
 鳥目の人なんかは、一寸先でさえ全く見えないだろう。

「みんなも疲れて寝てしまってるな。」

 後ろの馬車を覗いてみると、リリン一行を除いた他のメンバーは馬車に揺られて疲れてしまったのか、眠りについてしまっていた。

「あとどれぐらいで着きそうなの?」

「暗くて距離感が掴めないが、多分もう少しだと思う。」

「そう……。」

「リリンは疲れてないのか?」

「私?全然大丈夫よ。」

「だってボクら吸血鬼だもんね~。夜が深まれば深まるほど活発になっちゃうから。」

 フレイの言葉に納得していると、リリンがあることを問いかけてくる。

「そんなことより、あなた何も感じないの?」

「……何を?」

「てっきりとっくの昔に気が付いて、向こうが手を出してくるまで游がせてたのかと思ってたけれど……さっきから変な魔力がこの辺を漂ってるのよ。」

「へ?どういうことだ?」

「何かが私達の周りにいるってことよ。」

 全力で周囲の気配を察知しようとするが、リリンの言うその変な魔力というのは感じない。

「まぁ生物的な気配はまるっきりしないし、魔力だけで構成されてるまものじゃないかしら。」

「その……魔力だけで構成されている魔物って、具体的に何がいるんだ?」

 イヤな予感が頭をよぎる。

「そんなの決まってるじゃない。ゴーストよゴースト。」

「………………。」

 どうしてこうなる?滅多に現れないんだろう!?

 周りをゴーストが漂ってるという事実がわかった瞬間に、ゾクゾクとした悪寒が背筋を駆け巡った。
 心なしか寒くなってきた気もする。

「ヒイラギさん、冷や汗すごいけど大丈夫?」

「ん!?あ、あぁ大丈夫……大丈夫だ。」

 自分に言い聞かせるようにそう答えると、リリンがニヤニヤと笑みを浮かべながら、こちらの顔を覗き込んでくる。

「ねぇ、あなたもしかしてだけど……ゴーストとかそういう系統の魔物苦手なの?」

 リリンにそれを見抜かれた俺は、無言で首を縦にコクコクと振るのだった。
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