461 / 1,052
第四章
漂うナニカ
しおりを挟むあれからまた少し時が経ち、いよいよ完全に陽が落ちてしまった。
辺りは完全に真っ暗だ。
さっきグレイスにゴーストの話を聞いた後だから、辺りの不気味さに余計に拍車がかかり、ついついキョロキョロと見渡しがちになってしまう。
怖い話を聞いた後に、夜中トイレに起きるのが怖いのと同じ現象だ。
「グレイス、ちゃんと前見えてるか?」
「大丈夫っす~。自分夜目は利く方なんで。」
「それならいいんだが……。」
この暗さは並みの人間では、慣れるまでにかなり時間を要するだろうな。
鳥目の人なんかは、一寸先でさえ全く見えないだろう。
「みんなも疲れて寝てしまってるな。」
後ろの馬車を覗いてみると、リリン一行を除いた他のメンバーは馬車に揺られて疲れてしまったのか、眠りについてしまっていた。
「あとどれぐらいで着きそうなの?」
「暗くて距離感が掴めないが、多分もう少しだと思う。」
「そう……。」
「リリンは疲れてないのか?」
「私?全然大丈夫よ。」
「だってボクら吸血鬼だもんね~。夜が深まれば深まるほど活発になっちゃうから。」
フレイの言葉に納得していると、リリンがあることを問いかけてくる。
「そんなことより、あなた何も感じないの?」
「……何を?」
「てっきりとっくの昔に気が付いて、向こうが手を出してくるまで游がせてたのかと思ってたけれど……さっきから変な魔力がこの辺を漂ってるのよ。」
「へ?どういうことだ?」
「何かが私達の周りにいるってことよ。」
全力で周囲の気配を察知しようとするが、リリンの言うその変な魔力というのは感じない。
「まぁ生物的な気配はまるっきりしないし、魔力だけで構成されてるまものじゃないかしら。」
「その……魔力だけで構成されている魔物って、具体的に何がいるんだ?」
イヤな予感が頭をよぎる。
「そんなの決まってるじゃない。ゴーストよゴースト。」
「………………。」
どうしてこうなる?滅多に現れないんだろう!?
周りをゴーストが漂ってるという事実がわかった瞬間に、ゾクゾクとした悪寒が背筋を駆け巡った。
心なしか寒くなってきた気もする。
「ヒイラギさん、冷や汗すごいけど大丈夫?」
「ん!?あ、あぁ大丈夫……大丈夫だ。」
自分に言い聞かせるようにそう答えると、リリンがニヤニヤと笑みを浮かべながら、こちらの顔を覗き込んでくる。
「ねぇ、あなたもしかしてだけど……ゴーストとかそういう系統の魔物苦手なの?」
リリンにそれを見抜かれた俺は、無言で首を縦にコクコクと振るのだった。
27
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。
なつめ猫
ファンタジー
王太子殿下の卒業パーティで婚約破棄を告げられた公爵令嬢アマーリエは、王太子より国から出ていけと脅されてしまう。
王妃としての教育を受けてきたアマーリエは、女神により転生させられた日本人であり世界で唯一の精霊魔法と聖女の力を持つ稀有な存在であったが、国に愛想を尽かし他国へと出ていってしまうのだった。


黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる