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第四章
黒乱牛の仔牛肉
しおりを挟む商品が並べられている陳列棚を見て回ると、農業の街という名の通り…やはり肉と野菜がたくさん並べられている。
「うむ…どれもこれも新鮮なものばかりだ。特にこの柔らかそうな肉……たまらんな。」
さまざまな種類の肉が列べられている陳列棚にシンは顔を近付け、マジマジと眺めていた。今にもヨダレが垂れてきそうな勢いだ。
「それにしてもホント美味しそうなお肉ね~。これ見てたらお腹空いてきちゃうわ~。」
「あぁ、本当に美味しそうだ。」
赤身の肉には適度にサシが入っていて焼いたら美味しそうだ。でもステーキは昨日の夜サラマンダーでやったから……。できれば今日の昼ご飯は違う料理がいいな。
そして昼ご飯に使えそうな肉を吟味していると、陳列されている肉の中で一つだけ妙に値段の張る肉があることに気が付いた。
「ん?これは他のより一回り近くサイズが小さいけどなかなかお高いな。なんの違いがあるんだ?」
「あ、それは黒乱牛の仔牛のお肉なんです。」
親切に店員の人が仔牛の肉だとすぐに教えてくれた。
「なるほど、どおりで高いわけだ。」
よくよく見てみると、他の肉より肉の色が赤というよりはピンク色に近い色だ。幼い頃の牛は体にあまり鉄分を含んでいないためピンク色の肉になる。
「でもこれなら昼に食べるのにはちょうどいいかもな。」
肉質も柔らかいだろうし、余計な脂もついていない。昼食に使うにはぴったりだ。
「じゃあこれのロースをできればあるだけ欲しいんだが。」
「わかりました!!ただいま準備してきます!!」
注文すると、パタパタと店員の人は奥の方へと走っていった。
「仔牛の肉か、どんな料理にするつもりなのだ?」
「それはお楽しみだな。」
俺は頭の中で昼食のメニューの候補がもう決まったが、ランたちもここにある肉や野菜を見て何か食べたいものが見つかったかもしれないし、彼女たちの意見を先に聞いてみよう。
「どうだ?いろいろ見てみて、何か食べたいものはあったか?」
そう問いかけると、ドーナとランの二人はフルフルと首を横に振った。
「ん~、やっぱり思い付かなかったわ。」
「アタイもだよ。」
「じゃあ今日は俺のお任せでいいか?」
そう問いかけると二人はコクコクと首を縦に振った。
「わかった。」
それじゃあ今日の昼食はあのメニューで決まりだ。
「一つ疑問なんだけど、ヒイラギって何でそんなに簡単に作る料理が決めれるの?」
「簡単なことさ。この食材を使えばこんな料理が作れるっていうのが頭に入っているからな。」
こればっかりは料理の本を読んでどんな料理があるのか調べたり、実際に作るということを何回もやらないとできない。これも努力と経験の賜物だ。
「お客様~!!お待たせしました!!」
ランの疑問に答えていると、店員が包みを何個も携えてこちらに戻ってきた。店員にお金を払って肉を受け取り、俺たちは直売所を後にした。
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