転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
456 / 1,052
第四章

黒乱牛の仔牛肉

しおりを挟む

 商品が並べられている陳列棚を見て回ると、農業の街という名の通り…やはり肉と野菜がたくさん並べられている。

「うむ…どれもこれも新鮮なものばかりだ。特にこの柔らかそうな肉……たまらんな。」

 さまざまな種類の肉が列べられている陳列棚にシンは顔を近付け、マジマジと眺めていた。今にもヨダレが垂れてきそうな勢いだ。

「それにしてもホント美味しそうなお肉ね~。これ見てたらお腹空いてきちゃうわ~。」

「あぁ、本当に美味しそうだ。」

 赤身の肉には適度にサシが入っていて焼いたら美味しそうだ。でもステーキは昨日の夜サラマンダーでやったから……。できれば今日の昼ご飯は違う料理がいいな。

 そして昼ご飯に使えそうな肉を吟味していると、陳列されている肉の中で一つだけ妙に値段の張る肉があることに気が付いた。

「ん?これは他のより一回り近くサイズが小さいけどなかなかお高いな。なんの違いがあるんだ?」

「あ、それは黒乱牛の仔牛のお肉なんです。」

 親切に店員の人が仔牛の肉だとすぐに教えてくれた。

「なるほど、どおりで高いわけだ。」

 よくよく見てみると、他の肉より肉の色が赤というよりはピンク色に近い色だ。幼い頃の牛は体にあまり鉄分を含んでいないためピンク色の肉になる。

「でもこれなら昼に食べるのにはちょうどいいかもな。」

 肉質も柔らかいだろうし、余計な脂もついていない。昼食に使うにはぴったりだ。

「じゃあこれのロースをできればあるだけ欲しいんだが。」

「わかりました!!ただいま準備してきます!!」

 注文すると、パタパタと店員の人は奥の方へと走っていった。

「仔牛の肉か、どんな料理にするつもりなのだ?」

「それはお楽しみだな。」

 俺は頭の中で昼食のメニューの候補がもう決まったが、ランたちもここにある肉や野菜を見て何か食べたいものが見つかったかもしれないし、彼女たちの意見を先に聞いてみよう。

「どうだ?いろいろ見てみて、何か食べたいものはあったか?」

 そう問いかけると、ドーナとランの二人はフルフルと首を横に振った。

「ん~、やっぱり思い付かなかったわ。」

「アタイもだよ。」

「じゃあ今日は俺のお任せでいいか?」

 そう問いかけると二人はコクコクと首を縦に振った。

「わかった。」

 それじゃあ今日の昼食はあのメニューで決まりだ。

「一つ疑問なんだけど、ヒイラギって何でそんなに簡単に作る料理が決めれるの?」

「簡単なことさ。この食材を使えばこんな料理が作れるっていうのが頭に入っているからな。」

 こればっかりは料理の本を読んでどんな料理があるのか調べたり、実際に作るということを何回もやらないとできない。これも努力と経験の賜物だ。

「お客様~!!お待たせしました!!」

 ランの疑問に答えていると、店員が包みを何個も携えてこちらに戻ってきた。店員にお金を払って肉を受け取り、俺たちは直売所を後にした。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...