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第四章
農業の街ジンバ
しおりを挟むシンがいる関所へと歩みを進めるとシンと話していた兵士がこちらに気が付き、目があった。
(ん?この兵士どっかで見たような……。)
頭を捻って思い出そうとしていると、あっちの方から声をかけてくれた。
「人間のお方、先日は本当に助かりました。お陰でまたこの街で妻と子供と一緒に暮らせてます。」
その言葉で思い出した。この人はベルグの部下で、一番最初にお礼を言いに来た獣人だ。
妻子持ちだったことをよく覚えている。
「幸せそうで何よりだよ。今日はベルグは居ないのか?」
「ベルグさんは新兵の訓練で違う街に行ってます。」
新兵の訓練か、ベルグのしごきはキツそうだな。まぁ、本人は新兵のことが心配で仕方がないから、いち早く一人前になって欲しいんだろうな。
言動は少々乱暴なベルグだが、内面は部下思いのいいやつだから……きっとそんな風に思ってるに違いない。
「そうか、じゃあ後でベルグによろしく伝えておいてくれ。」
「承りました。」
「うむ、ではそろそろ中に入ろうぞ。」
「そうだな。」
俺達はシンの後に続き、ジンバの街中へと足を踏み入れた。関所を抜けてまず目の前に飛び込んできたのは、大きな畑と牧場だ。
「シンの言っていた通りの街だな。」
「そうであろう?王都のような華やかさこそ無いが、このような景色もまた良いものなのだ。」
辺りを見渡しながら歩いていると、牧場の中にちらほらと黒い大きな角が生えた牛が見える。
「なぁシン、あれってもしかして例の黒乱牛ってやつか?」
「うむ!!その通りだ。黒乱牛はこのジンバでしか育ててはおらぬ。見てわかる通り、広大な牧場が必要だからな。他の街ではなかなか真似できぬのだ。」
これだけ広大な草原でこんなにのびのび暮らしてれば、あれだけいい味の肉になるのは納得かもしれない。
「あはは~♪牛さんいっぱい!!」
「こ、こんなにいっぱい目の前に来るとちょっと怖いっす~。」
シアがはしゃいでいたのでそちらの方を見てみると、シアとグレイスの目の前にたくさんの黒乱牛がひれ伏すように並んでいた。
その光景は、さながら黒い絨毯のようだ。
「すごいな、すっかりシアが人気者だ。」
「気性の荒い黒乱牛があそこまで大人しく平伏するとは……どうなっているのだ。」
いくら気性が荒いとはいえ、ステータス的に圧倒的強者のシアを本能で見抜いたんだろうな。
シアが動くと、それに合わせて黒乱牛達も動く……その光景はさながら女王が大量の兵士を引き連れているようだった。
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