441 / 1,052
第四章
サラマンダーの肉の味
しおりを挟むみんなが美味しいって絶賛してるサラマンダーはどんな味だろうか。
期待で胸を膨らませながら、一番素材の味が分かるステーキをフォークで刺して口へと運ぶ。衝撃的なことに、舌の上にのせた瞬間に甘い肉汁がジュワっと溶けだした。
味わうように咀嚼すると、濃い旨味が凝縮された肉汁がどんどん口の中を満たしていく。脂も全然しつこくない、いくらでも食べられそうだ。
「……美味い。」
この世界に来て食べた食材の中でダントツで美味い。竜種の肉はこんなに美味しいのか……ワイバーンも美味しかったりするのかな?
チラッとグレイスに視線を向けると…。
「ひ、ヒイラギさん何か視線が怖いっす。」
視線に気が付いたグレイスは体をビクッと震わせ、冷や汗を流しながらこちらを向いて言った。
「いやな、サラマンダーって竜種だろ?グレイスも一応竜種…だよな?」
「じ、自分は美味しくないっす!!食べても不快な思いをするだけっす!!……たぶん。」
必死に自分は美味しくないとアピールをするグレイス。翼膜のついた両手をブンブンと振っている姿はどこか愛らしい。
そこにジルが助け船を出した。
「私の店に以前ワイバーンの肉を仕入れたことがありますが……硬くて血生臭くて、とても食べれたものではありませんでしたな。」
「ふむ、そうか…ちょっと残念だ。」
「そ、そこまでボロボロに言われるとちょっと悲しいっす。」
「まぁ良かったじゃない?これで非常食として食べられることはなくなったんだから。」
「自分非常食だったんすか!?」
ボロボロに言われたグレイスが落ち込んでいるところに、ランが追い討ちをかけるようにからかい始めた。
ランも本当に誰かを弄るのが好きだよな。
「ふふっ♪冗談よ?」
「ランさんが言うと冗談に聞こえないっす!!」
ランがグレイスをからかっている様子を少し笑いながら見ていると、シンが俺に話しかけてきた。
「ヒイラギよ、今日という今日はお主にも酔っ払ってもらうぞ?」
そう言ってシンは円卓の上に一つの酒を置いた。
「これは?」
「これは象人でも酔っぱらうと言われている…我が国の中で最も酒精が高い酒だ。芋酒の二倍は効くぞ?」
「ふむ、俺が飲むのは構わないが…シンはこんなの飲んで大丈夫なのか?」
「我のことは心配せずともよい。今日のヒイラギが酔っぱらう事が最重要事項なのだ!!」
う~ん、よっぽどの事がない限り俺は酔っぱらうことはないのだが、まぁものは試しだな。盃にトクトク…と注がれたその酒を手に取りグイッと飲み干した。
35
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる