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第四章
溢れ出すイリスの不満
しおりを挟む何種類か試飲した後、結局一番最初に試飲させてもらった芋酒が一番飲みやすいだろうという決断に至った。
初めて飲む人でも飲みやすいというのはやはり目を引くものがあったし、何より美味しかったからな。
「これをじゃあ二本貰っていいか?」
「ありがとうございます!!二本で銀貨80枚です。」
金貨を店員に支払って二本の芋酒を受け取った。
よし、とりあえずこれで土産も買ったし今日やるべきことは終わったかな。
「ふふっ♪とっても美味しかったです。ありがとうございました。」
イリスも結局勧められた芋酒をすべて試飲し、今はほんのりと顔を赤く染めていた。もともとの美貌も相まって少し妖艶な雰囲気が漂っている。
店を後にすると、大通りで何を思ったのかイリスが右手に抱きついてきた。
「いつもいつも…ドーナさんとランさんばっかりこうしているのを見てて、ずっとズルいと思ってたんです。」
「いつもと言っても寝るときだけだぞ?」
「それでもズルいものはズルいんです!!」
心なしか先ほどより顔の赤みが増してきているような気もする。だんだん酔いが回ってきて、彼女の中に溜まっていた不満が少しずつ表に出始めてきているようだ。
「私だってヒイラギさんの女神ですしぃ?こんな風にくっついて~イチャイチャしたって、別におかしくないとおもうんですよぉ~。」
「い、イリス…少し落ち着いて……な?」
暴走気味なイリスに落ち着くよう促すが…それは火に油を注ぐ行為だった。
「こんな由々しき事態に落ち着いてられるはずがありません!!」
なんでうちのメンバーには酒癖がこうも悪い人しかいないんだ……。酔いが覚めれば落ち着きを取り戻すとは思うが、それまでが長そうだ。
「うぅ~……女神だって恋の一つや二つ位経験したいし?かといってこの世界に男性の神なんていないし?神同士の恋愛なんて最初から実現しないし?それで悶々としてる私の前で皆さんは構わずイチャイチャするしぃ~?」
普段表に出ないイリスの不満がここぞとばかりに爆発する。まさかこんなに溜まっていたなんて驚きだ。
「私だってイチャイチャしたりラブラブしたりしたいんです~!!」
め、女神にも恋愛願望はあるんだな……。ちょ、ちょっとこれから気を付けよう。…とはいっても彼女達が気を付けてくれるかに懸かっているんだが。
イリスの恋愛に対する愚痴は、この後酔いがさめるまでしばらく止むことはなかった。
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