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第四章
恐るべしミクモの食欲
しおりを挟むいなり寿司を美味しそうに頬張っているみんなに声を掛ける。
「みんな食べながら聞いてくれ、明日この国を発って人間の国に戻るぞ。」
「あら、ずいぶん急なのね?」
「あっちに先手を打たれる前に行動を起こしておきたいんだ。」
これ以上敵に先手を打たれるわけにはいかない。今までは後手後手に回っていたからな。
「アタイは全然構わないよ。」
「シアも~!!」
「ワタシはヒイラギにずっとついていくわ。」
みんなも賛成のようだな。なら明日出発するという方向で準備しよう。
「向こうに帰るなら……ミルタさんにお土産買ってったほうがいいかな。」
取りあえず買うだけ買って、人間と獣人とでちゃんとした関係が持てたら渡そう。
今の状態で状態で渡したら不審がられてしまうかも知れないからな。
それよりも、シンをどうやって人の王と会わせるかが一番の問題だな。
「なぁドーナ、ちょっと知恵を貸して欲しいんだが、シンと人間の国王でなんとか会談の場を作れないかな?」
「そいつは難しいねぇ。王族に会うにはそれなりに繋がりが必要なんだよ。王族と深い繋がりがあるやつがいれば話を通してもらえるかもしれないけど……。」
「そうだよなぁ。」
「我が直接人の王のもとへ行けば良いのではないのか?」
単純明快とばかりにそう言ったシンへと、ミクモが呆れながら言った。
「シン坊…全ての人間がヒイラギのような性格ではないのじゃぞ?特に人間の王は危険じゃ、妾達を奴隷にしようとした張本人じゃからのぉ。」
ミクモの言うとおりだ。流石に100年も経ったから王も変わっているはずだが……警戒はするべきだ。
「むぅ、ではどうすれば良いのだ?」
「まずは一旦どうにかして俺が会ってみよう。そこで獣人族やエルフのことをどう思ってるのか聞いてくる。話はそれからでどうだ?」
もし、再び獣人族やエルフを奴隷にしたいと思っていたなら……その時はまた別の方法を考えよう。
そんなヤツにシンとは会わせられない。
「うむわかった。それでよかろう。」
シンもそれで納得してくれた。
これで後は王様とのコンタクトの方法を考えるだけだな。王族とパイプを持ってる人……誰かいたかな。
考えを巡らせていると、ある人物のある言葉を思い出した。
「ん?そういえば、ミルタさんが前に王宮で料理食べた……ような話をしていたな。」
ミルタさんをこの店に泊めたとき……確かそんなことを言っていたはずだ。
となれば、今現状頼れるのはあの人しかいなさそうだな。だが、王族とコンタクトをとるとなれば、それ相応の準備が必要なはず。
渋られないように交渉材料を準備しておいた方が良さそうだな。
そんなことを考えていると……。
「お主、妾がおかわりを所望じゃ!!」
「はへ?」
皿の上にあった大量のいなり寿司は、綺麗サッパリ無くなってしまっていた。
「ま、まだ食べるのか……。」
「無論じゃ!!」
結局もう一度大量にいなり寿司を作り、その殆どをミクモが食べ尽くしてしまったのだった。
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