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第四章
大臣衆の考え
しおりを挟む「さて、では気を取り直して本題に入るとしよう。メーネル、此度の襲撃による全体の被害を報告してくれ。」
「ハッ、襲撃により郊外のほとんどの村が壊滅。また現時点でこの王都へ避難してきた避難民をまかなう為に、備蓄していた食料の3割を消費しています。王都への襲撃では目立った被害は報告はされていません。」
「うむ。ガルド、兵士の被害はどうだ?」
羊の獣人の報告を聞き終えたシンは、狼の獣人に問いかけた。
「兵士の被害は郊外へ赴いていた兵士が20名戦死。それ以外では兵士達に精神的な疲労が見られます。」
「戦死した兵士の家族には、出来る限りの支援をするのだ。そして民を守るために勇敢に戦った戦士として慰霊碑に名を刻んでくれ。生き残った兵士達には交代で休暇を与えるようにな。体を壊されては困る。」
「仰せのままに。」
こうして見るとシンは本当に優しい王様……だな。一国を預かる王として理想的と言えばよいのだろうか。
「メーネル、農作物や畜産物…海産物への影響はどうだ?」
「現在確認されています影響は、全体的な物価の上昇及び供給が少なくなっています。このままですと、いずれ飢饉が訪れるかもしれません。早急に手を打つ必要があるかと……。」
「うむ、そうだろうと思っていた。その事については我に考えがある」
どうやらここで仕掛けるらしい。さて彼らはシンの考えに賛同するか否か……。
「我は人間と再び交流を持とうと思っている。両国で手を取り合い、物流を広げればこの国の未来はきっとなんとかなるはずだ。」
シンのその言葉に大臣達は……。
「やはりそう思っておられましたか。」
「なんだメーネル、気づいておったのか?」
「私だけでなく、他の皆も気が付いておいでですよ。」
ちらっとシンが周りの大臣達の顔を見渡すと、皆一様に頷いていた。
「シン様、その事に関しては既に私共は考えが一致しております。」
「……ではその考えを聞こう。」
「はい、私共はシン様のお考えに賛成致します。」
「むっ!?」
羊の獣人から放たれた言葉は、シンや俺達の予想を大きく上回る発言だった。
「反対ではないのか?」
「このままでは我が国が滅亡へ向かうのは目に見えております。故に私共は他の国に頼る他無いという決断に至りました。それにヒイラギ殿という人間と我らを繋ぐには最良の人物もおりますし。」
「み、皆はそれでよいのか?」
シンがそう問いかけると他の大臣達は首を縦に振り、肯定の意を示した。
「では早速、近日我がヒイラギと共に人間の国へ赴こう!!」
「王自らが赴くことに反対は致しません……。で・す・が、その代わりシン様不在の間は代理の王をどなたか立ててください。」
「それに関しては良いあてがある。任せておけ。」
代理の王か……いったい誰がなるんだろうな。
そんな疑問を抱きながらも会議は進み、無事終わりを迎えたのだった。
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