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第三章
帰還
しおりを挟むそれから少し時が流れ……。
「おい、リリン。いつまでビクビクしてるんだ?俺はとっくに回復したぞ?」
「あ、あなたが悪いんでしょ!?やるならやるって言いなさいよ!!こっちにも心の準備ってものがあるの!!」
ドーナの背中からリリンがギャーギャーと喚き立てる。
そして城門をくぐった所で、俺はある問題に気が付いた。
「しまった、シンにどうやって安全が確保されたことを伝えよう……。」
この城下町が閑散としているところをみるに、既にある程度遠くに逃げているはずだからな。
「それなら大丈夫よ、私がもう伝令用のコウモリをライラのところに飛ばしたから。多分今頃引き返してる頃じゃないかしら?」
「そうか。」
それなら安心だな。
「ところで、こいつはどうするんだ?」
「取りあえず情報を聞き出さないとね、なんにしても死の女神に関する情報が少なすぎるわ。それに他の幹部についても知ってるだろうしね。」
「確かにな、他の幹部もいずれ動き出してくるかもしれないから……。そいつらの情報は必要だな。」
だが、しばらくは大きな動きはできないだろう。あちらも最大戦力の幹部を一人失っているから、大胆に動くことはできないはずだ。
歩きながら捕獲した幹部の処遇のことを話しているとあっという間に王宮に着いた。
もちろんここにも人は誰一人としていない。だからシン……と静まり返っている。
「人がいなくなるとこうも変わるんだな。」
「私はこういう感じの方が好きよ?薄暗くて…静かなところって最高じゃない?」
「吸血鬼にとってはそうかもしれないな。」
そんな時……ふとシンが話していた獣人と人間との関係の修復の話を思い出した。
「なぁリリン、人間と獣人がまた交流できるようになると思うか?」
「な、何よ急に……交流なんてもうはじまってるじゃない。あなた達は獣人と交流してないの?」
「いや、俺達だけじゃなく人間全体と獣人全体がってことだ。」
「それは難しいんじゃない?確かにあなた達は獣人達は誤解を解いたかもしれないけれど……もし、種族を隔てる原因となったような、腐った性格をした人間が彼らの前に現れたらどうなるかしら?」
そうだよな……俺たちへのイメージはかなり良いイメージにはなっているとはいえ、それは人間全体へのイメージではない。
シンが人間と再び合流したいという気持ちは大いに共感できるが……。
彼も俺もこの世界の人間については無知だ。まずはそれを知るところから始めないとな。
「……まだまだ問題が山積みだな。」
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